コラム

3つの成功事例から学ぶ!企業が「IGUD」を活用して得た成果とは?

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▼語り手プロフィール
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
第2CXデザイン本部
課長 塩田 光男/Mitsuo Shiota

「秒で伝わる」をキーワードに、DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)が独自に開発したデザインメソッド「IGUD(アイジーユーディ)(※1)」。インフォグラフィックスとユニバーサルデザインの考え方を融合したこのメソッドは、2018年のリリースから2024年の現在に至るまで、多種多様な業界やプロジェクトで活用されてきました。

前回の『独自開発のデザインメソッド「IGUD®」。「秒で伝わる」表現制作の秘訣(ひけつ)とは?』の記事では、開発者の一人である相馬に開発の経緯や考え方などについてインタビューを実施しました。そして今回の記事では、実際にIGUDを活用した代表的な3事例について、担当ディレクターの塩田に話を聞きました。

(※1)「IGUD」は、「DNPデジタルマーケティング時代のデザインメソッドIGUD」の略称です。
(※1)「IGUD」は、大日本印刷株式会社の登録商標です(商標登録第6084988号)。

1.【CASE 1】配布数を5倍に。リーフレットを軸にコミュニケーションを改革

リニューアルしたリーフレットのBefore・After

― 1つめは曹洞宗(そうとうしゅう)様の事例です。プロジェクトの概要を教えてください。

曹洞宗様が発行しているリーフレット『坐禅のすすめ』を、IGUDを用いてリニューアルしました。そこからさらに、動画やWebサイト制作、Web広告、書店メディアまで一貫して当社で手掛けています。

― どのようにしてこのプロジェクトがはじまったのでしょうか?

以前の『坐禅のすすめ』は、初見の方からするとかなりわかりづらいものでした。そこで、「IGUDを用いて、このように変えてみてはいかがでしょうか」と具体的な案を制作して曹洞宗様に自主提案したのがスタートです。当時、あまりの変わりように先方は驚きを隠せないようでしたね(笑)。でも「小中学生を含めた老若男女に坐禅を広めたい」という指針にフィットしている点、難しそうな印象を払拭(ふっしょく)できそうな点を評価いただき、実際に展開していくことになりました。

― 特に注力したポイントを教えてください。

今回の主題である坐禅は、無形のもの。有形のプロダクトに比べ、伝えるための工夫がより重要になります。そこで、俯瞰(ふかん)して全体像がわかる構成や一目でわかるビジュアルに落とし込むことを意識しました。詳細を知ってもらうことも大事ですが、まず何もわからない状態の相手には全体像をつかんでもらうことが大事。受け手をしっかり見据え、目的を見失わないよう設計しました。また他の動画やサイトに表現を落とし込んでいく際には、コンテンツファースト(※2)を前提に、リーフレットの世界観をそのまま反映するよう意識しています。

(※2)メディアやデバイスにあわせてコンテンツを作り込む「メディアファースト」ではなく、戦略をもとに、最初にコンテンツを企画・設計します。

リニューアルのメディア展開スケジュール

― どのような効果や結果が生まれたのでしょうか?

リーフレットは、全国の曹洞宗の寺院に配布されるものです。その配布数を年間で5倍に伸ばし、多くの人に手に取ってもらうことができました。また曹洞宗様としては寺院への訪問者数が大事な指標になるのですが、コロナ禍の影響を受けて「訪問者の足が遠のいた」という問題が新たに発生してしまって。そこで、IGUDを用いたWebサイト新設を提案し、Web上での訪問者数獲得に成功しました。そこから、広告展開も含めた新たなコミュニケーション醸成をサポートしています。

2.【CASE 2】300種のチラシを最適化。さらに業界課題を解決するDXを推進

プロトタイプ制作のステップ

― 2つめは生命保険会社様の進行中の案件。プロジェクトの概要や実施経緯を教えてください。

クライアントは、約300種もの保険商品紹介チラシを活用していた企業。種類が多い分、管理も活用も大変です。また社内外のさまざまな方が手掛けているので、構成の考え方も違い、修正負荷もかなり大きいことがネックでした。この課題をどうにかしたいというご相談をいただき、IGUDを活用したチラシ最適化とデジタル施策を実施することになったのです。

― どのようなプロセスで進行したのでしょうか?

はじめに行ったのは、既存チラシのレビュー分析です。IGUDの指標「SCALE」を用いて、掲載内容やデザインをチェックしていきました。それと同時に、情報や各チラシの必要可否の精査も実施。1カ月ほどで今後の改善に生かすべき部分を抽出し、それをもとにプロトタイプを制作しました。進め方としては、最初から100点をめざすのではなく、まずはたたき台としてかたちにしてすぐ検討に移るというアジャイルな方法で最適解を探っていくイメージです。さらにこのプロトタイプの検証には、アンケートによるユーザー調査も取り入れました。その結果、IGUDを活用した案が高評価を得られたため、最終的なチラシの効果も見込めると捉えています。

アンケートによるユーザー調査結果

― このプロジェクトだからこそのポイントを教えてください。

保険をはじめとした金融商品は、複雑な内容も多いですよね。それをいかに生活者にわかりやすく伝えられるかが、頭を悩ませるポイントです。単に「安い」「カンタン」というだけでなく、その商品の本質的なバリューは何なのか。それを「伝わるかたち」に落とし込むことが、本プロジェクトの肝だと思います。

― まだ進行中のプロジェクトとのことですが、今後はどのような展開を見据えているのでしょうか。

保険の代理店が、紙のチラシだけでなくイントラ(企業内ネットワーク)でも内容を閲覧できるよう、保険商品情報のDX化にも取り組んでいます。これはまだ、どの保険会社も実現できていない領域。業界全体が悩んでいる課題を解決するプロジェクトとして、ともに歩みを進めていきたいと思います。

3.【CASE 3】媒体を横断して活用できる万能コンテンツを制作

プロジェクトの進行プロセス

― 3つめは損害保険会社の事例。こちらも概要と実施経緯をお聞かせください。

既存の9種類のチラシをテーマにDXのプロジェクトを進行したい、という損害保険会社さまからの打診でスタートしたプロジェクトです。今は保険を扱う代理店でもタブレットが普及していることから、紙やタブレットなどの媒体を問わず活用できるコンテンツデザイン「UXパンフレット(※3)」を提案。IGUDを用いて、生活者に魅力が伝わるアウトプットをめざしました。

(※3)「UXパンフレット」は、「DNP UXコンテンツシリーズ UXパンフレット®」の略称です。
(※3)「UXパンフレット」は、大日本印刷株式会社の登録商標です。

― このプロジェクトや提案内容の特徴を教えてください。

この業界は、商品やサービスの細かな規約や制約を文字で表現するという傾向があります。そこが特に生活者がわかりにくいと感じる部分なので、IGUDをうまく活用し、「秒で伝わる」表現に変えていくように工夫しました。さらに、タブレット用の展開形式を、あえて一般的なWebではなくPDFとしています。これは、実際にお客さまに保険提案をする代理店の環境に合わせ、オフラインでもパンフレットが見られるようにするために採用した手法です。また、チラシの構成を上下で切り分けられる「2 IN 1」構成とすることで、形式の違うタブレットでもそのまま展開ができる仕様にしました。まさに根幹にあるのは、コンテンツファーストという考え方です。

リニューアルしたパンフレットのBefore・After

― プロジェクトの進行方法の観点では、どのようなポイントに注力しましたか?

基本的なプロセスは、CASE 2とほとんど変わりません。しかし本件では、プロジェクト開始前に、先方のご担当者へIGUDやデザインの考え方をレクチャーするセミナーを開催しました。最初の段階で目線合わせをして合意を得ながら進めたことで、その後もスムーズに進行できたと感じています。

― まだリリースしたばかりの本プロジェクト。今後の展望を教えてください。

今度はぜひスマホ版もほしいというリクエストが出ているので、新たに媒体の領域を超えた展開に注力していきたいです。また、このようなタブレットコミュニケーションのコンテンツ展開は、こうした代理店のある保険業界ではまだまだ先駆け的な存在。業界全体にこのやり方を浸透していけたらいいなと思いますね。

4.【まとめ】重要なのはIGUDを通して「価値のある体験につなげること」

担当ディレクターの写真

― IGUD活用の中で、一番重要なプロセスや考え方を教えてください。

最も大切なのは「ゴール設定」ではないでしょうか。最終的なアウトプットのイメージを初期段階で描き、それを見据えて中身を設計していく。その旗印をしっかり立てることが、より良いものをつくる上では必要不可欠なのだと思います。そして、やはりそこには、驚きや感動が鍵になっているのではないかと考えています。

― IGUDを用いて制作物をつくる者としてのポリシーをお聞かせください。

クリエイティブディレクターとして、誰も生み出せない唯一無二のものをつくっていきたいです。体験価値を向上させるものを提供することこそが、私たちの役目なのではないでしょうか。

※2024年4月時点の情報です。

IGUDの情報は以下のWebページでも公開していますので、ぜひご覧ください。