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コミュニケーションは時間と場の共有 八幡 暁

「TRAVEL×IT CONTEST」の審査員の方々に、独自の視点でお話いただく本コラム。初回は冒険家の八幡暁さんに、自身の経験から考える「コミュニケーション」についてうかがった。
シーカヤックと身体ひとつで、オーストラリアから日本までの多島海域を舞台にした1万キロに及ぶ人力航海の旅をしている八幡さん。言語・文化の枠を超え様々な人たちと触れ合ってきた彼が考える「コミュニケーション」とは。
※テント、魚を取るための装備、調理器具、着替えなど、シーカヤックに格納できる40キロ程度の荷物は持参。

シーカヤックの旅で、色々な部族にお会いになっていると思いますが、言語・文化の違う彼らと、どのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか?

ある程度、母国語は覚えていきます。まったく話せない状態で行くのは、舟の使い方をしらないまま出航するようなもので何かあったときに危ないですから。

話せない人とのコミュニケーションで大切なことは笑顔ですかね。自分が敵でないことを示す為にも、笑顔で伝える。これはすごく効果的。意味も言葉もわからなくても、まず笑ってみたり(笑)

例えば、木を拾って折って見せる。意味もなく笑うと、なぜか相手も笑う。

その積み重ねが大事なのかもしれません。同じ場所を共有することで、言葉がなくとも信用し合えるようになることもあります。

人と人の交わりが時間と場の共有だとしたら、「同じ時間をできるだけ心地よく過ごした」っていうのがコミュニケーション肝なのかな。だから、場所っていうのもすごく大事だと思います。

例えば、今日、一緒に同じ海を見た、とか。梅雨の微妙な晴れ間に、湿度が高かったけど気持ち良かったと共に感じた、とかです。

スマートフォンやSNSなどのコミュニケーションについて、どう思いますか?

スマホとかSNSとかって、全部が都合がいい。だから、すごく便利だと思うんです。

そして、自分にとって都合のよい情報だけを選択できるし、コミュニケーションの時間も場所も選択できるし、遮断することも可能です。

反面、失うものもある気がしています。

文字を打ちながら、または話をしながら感じる、気温や湿度、肌で感じることまでは共有できない。
一緒に居たなら話がなくともコミュニケーションは成立したりするけど、それが成り立ちにくい。

「こっちは暑いよ」とか「扇風機回してるよ」とか情報の交換は出来ますが。

だから、そういうリアルな情報が、より大切な時代になってくるんでしょうね。

高校生、大学生など、スマートフォンやインターネットを切り離せない世代に何を伝えたいですか?

“生きていること”かな。
彼らが何をもってして、“生きていること”を実感するのか分かりませんが、あの手この手で自分の五感を震わせてほしいですね。
例えば、彼らの興味があるものの中に、オシャレ、美容、ゲーム、受験とかがあるとします。キャラクターが好きとかアイドルが好きとかもかな。それはそれで良いと思いますが、人が作り出したルールや情報の中でのことが多く、なくても生死にほとんど関係ないことばかりです。

空気がなかったら、人は10分で死にます。水が無かったら一週間も生きられない。
当たり前だけど「生き物」として大事な身体性を実感する機会が、あまりないんじゃないかな。それを取り戻せたらと思います。

細胞が震えるような体験をしたら暮らしのあり方も変わってくるかもしれません。

今の社会は情報が大量にあるなかで、小さい頃から効率と成果を求められがちです。
スマホをきっかけに、五感を使うようなことがあるといいかなと思います。

ITと五感が近づくような技術は開発されていくのでしょうが、絶対的に違うのは「死」がそこにあるかどうかです。

経験を元に振り返ると、ワクワクやドキドキ、恐怖や想定外に触れる可能性があることも大切な要素かもしれません。

人と比較して高いとか、優れてるとかじゃなく、その人なりの力や免疫が動き出すような機会や場を残しておいてあげたいと思っています。

八幡暁(やはたさとる)氏。1974年東京都生まれ。大学時代より海に目覚め、八丈島で素潜りをはじめる。卒業後は各地の漁師の仕事を学びながら国内外を巡る。旅の途中でシーカヤックと出会い、2002年から「海と共に暮らす人々は、どのように生きているのか」をテーマに、オーストラリアから日本までの多島海域を舞台にした人力航海の旅「グレートシーマンプロジェクト」をスタート。フィリピンー台湾海峡横断(バシー海峡)(07年)など世界初となる航海記録を複数持つ。
HP http://www.churanesia.jp/gsp/

【後記】

何も飾らない八幡さんの言葉からは、子供のような無邪気さと、芯の強さを感じた。五感を使ったリアルな体験を大切にし、生きることについて、真剣に伝えようとする姿は、とても魅力的で、ずっと話していたくなった。

企画・構成:高林 孝幸/春山 弘明
編集:波多野 千絵
写真:高林 孝幸

インタビュー日:2016/6/9

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