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出会いの創出からモノヅクリの継続へ。 鈴木 正晴

「TRAVEL×IT CONTEST」の審査員の方々に、独自の視点でお話いただく本コラム。第二回は「日本百貨店」を経営する鈴木正晴さんが、ニッポンの“モノづくり”を作り手と使い手の「出会い」という観点から語ってくれました。

日本百貨店。ニッポンヒャッカテンと読みます。
人を食ったような名前の小売店舗を初めて、はや5年半が経ちました。一見よくある、食品も扱う和雑貨の店。ですが、実は骨太なコンセプトに頑固にこだわり続けて今があります。
それは、「作り手と使い手の出会いの場」。
ただ単にこれイイネ、これオイシイネで物が売れていくのではなくて、どんな人がどんな思いで作っているのか。それがきちんと使い手=買い手に伝わる場所に。
そしてどんな人がどんな思いで買っていくのか、それがきちんと伝わる場所に。
最初の取引先は十数社程度。オープン時の扱い商品は100種類くらいでした。それが今では、人と人との縁をつなぎ続けて、900社、8000種類に。全国様々な地域のたくさんの作り手が、都心のたくさんの使い手との出会いを求めて、「出会いの場」=日本百貨店に集まって下さっています。

そもそも社会人になり海外のブランド品を日本に輸入する、いわゆる商社に勤めていた自分にとって、日本製の商品を扱う仕事を始めることは全くの想定外でした。きっかけはいくつもあるのですが、たとえばその一つが靴。日本での値段が20万もするイタリア製の靴を輸入していた時に出会った、浅草の靴職人の手による、8,000円の靴。この差は何だろう?私の眼には、それは決して素材や品質だけの違いで説明できる差ではないと感じられました。一言でいえば、ブランディング力の差。買い手が作り手をリスペクトし、売り手がきちんと作り手の素晴らしさを理解しているヨーロッパと、日本との意識の差が値段の差に表れているのではないか。

デザインの仕事もしていましたので、そのあたりの日本人の「クリエイターに対する評価の低さ」は常に感じるところでもありました。たとえば「社用封筒のデザイン」。封筒屋さんに頼めばある程度のデザインを提案してくれて、封筒の費用は請求されてもデザイン費は請求されない。そんな状態に慣れ切って、デザイナーに対して正当な対価を払おうという意識が無い。そんな場面に何度も出くわしました。
海外のモノにばかり高い値段を払うのではなくて、身の回りにあるスグレモノに目を向けるきっかけを作りたい。そしてそのスグレモノのモノヅクリにお金を廻したい。それが日本のモノヅクリが継承されていくために必要なコトなのではないか。
そんなことを考えて、どうせならそのスグレモノに目を向けるきっかけを、作り手の方と一緒に作ろうじゃないかと、オープンしたのが「日本百貨店」なのです。
ですので、日本百貨店は「売れるモノ」ではなく、「売りたいモノ」を集める。「売りたいモノ」が売れないときは「売れるように創意工夫」する。そして、一人でも多くのヒトコトモノの出会いを創出するために、ヒトがたくさんいるところに出店する。
スズキさんは何考えて居るかわかんないとよく言われるのですが、愚直に「出会いの場」を作ることだけを念頭に、その場その場で最適だと思われる方向に進んでまいりました。もちろん失敗もたくさんありますが、「東京というマーケットで販売するなら、まず日本百貨店に相談しよう」。そんな存在になりたいと願った5年半前の思いに、少しずつ近づいている実感を持っております。

もっともっとたくさんの方にこの出会いの場を開放するために。最近では店頭でのデジタルサイネージの活用(それもただ流すだけではなく、血の通った活用法を模索中です)や、売るぞ!というだけではなく、一度きていただいたお客様に再来店いただくためのECなど、自身の苦手な分野も頑張って勉強中です。また、創業時からの思いであった海外進出についても少しずつではありますが、実現し始めています。

全ての根幹にあるのは「出会いの場」という概念と、ヒトとのつながりです。小さなトライアルから始めた出会いの場という実験が、少しずつ大きな渦となっていっています。是非皆さんもこの流れに参加して、作り手としてそして使い手として、様々な出会いを経験し、日本のモノヅクリ、そして日本のヒトヅキアイを少しだけ見直してくだされば、それがまた小さな渦、大きな渦となり、スグレモノを支え続けるのだと思います。
日本百貨店はこれからも頑固に、「作り手と使い手の出会いの場」を目指し続けます。

鈴木 正晴(すずきまさはる)氏。1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学卒業後、伊藤忠商事㈱に入社。国内の“モノづくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社、2006年4月に株式会社コンタン立ち上げ。2010年12月、御徒町に日本の優れものを集める小売店“日本百貨店”をオープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出会いの場を提供している。

著者:鈴木 正晴

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