BtoB企業の展示会最前線 コロナ禍を経たいま…リアル?オンライン?これからの展示会の在り方をどう考える?

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▼語り手プロフィール
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
第4CXデザイン本部
(左)山中 淳/Jun Yamanaka
(右)石田 愛/Ai Ishida

ここ数年、展示会を取り巻く状況は大きく変化してきました。コロナ禍では半ば強制的に非接触型のイベントへの移行が進んだ一方で、現在ではオンラインとリアルの双方のメリットを最大限に引き出す“展示会のDX”が進んでいます。本記事では昨今の展示会のトレンドや効果的な機会創出に向けて大事なポイントを、DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)でBtoBのマーケティング支援を行う山中淳と、インサイドセールスを専門にする石田愛が解説します。




1. これからの展示会のコンテンツは「二次利用」を前提に



一般的に展示会というと、大規模な合同展示会を思い浮かべる方が多いと思いますが、DCDが手がけている展示会にはどのようなパターンがありますか?


山中:主に3つあります。1つ目は他社が企画する合同展示会。2つ目は自社のスペースや展示会場を借りて顧客を招く、単独展示会や内覧会。3つ目はショールームなどで行う常設展示です。それぞれ規模感やテーマ性の違いはありますが、どれも企業のブランドや商品の認知拡大と新規のリード獲得のために開かれる場であることは共通しています。


石田:合同展示会ならば、例えば「バックオフィス改善エキスポ」「店舗・EC販促ツール展示会」というような、来場者の属性や課題感が明確になっていて、それらが自社の求めるリード像と一致する場合には、高い効果が見込めます。また、自社で開催するタイプのものは、事前の周知を戦略的に効率よく行えば、よりロイヤルティの高い顧客とのつながりを生み出せる場にできるでしょう。


展示会場のイメージ写真


コロナ以降、オンラインで行われる展示会が増えましたが、オンラインでの開催とリアルでの開催、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?



山中:オンラインはリアルに比べてローコストで実施できるメリットはありますが、いざ出展してみると既存顧客の再来が多く、新規顧客がなかなか来訪しないといったケースが少なくないようです。また、双方向的なコミュニケーションが取りにくく、個人のプレゼンスキルに成果が大きく左右されてしまう傾向もあります。リアルでの実施は人もお金も必要ですが、やはりFace to Faceで話せる安心感は、新規のリード獲得に大きく影響するようです。


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石田:リアルでの開催は、目的に合わせてブースのつくり方を変えることも重要です。「とにかくロゴを覚えてもらう」などの企業認知・ブランディングに特化するケースでは、目立つように大きめのブースで、派手な演出ができるとよいでしょう。一方で、顧客が自身の課題感やサービスについての対話を求めていて、その場で密なコミュニケーションを取れた方が、よい商談につながるリードが獲得できる場合もあります。規模の小さなブースで個別に相談がしやすそうな空間をつくり、さまざまな展示会で複数回実施するなどすると狙った効果を得られやすいと思います。



これから展示会の開催を企画する際には、オンラインとリアルをどのように使い分けていくのが良いでしょうか?


山中:どちらかを選ぶというよりかは、両方をうまく活用することと、「二次利用を前提とした展示会コンテンツのデジタルアーカイブ化」を推し進めることが重要だと考えています。例えば、リアルの展示会のために作りこんだ空間をデジタルにアーカイブしてオンラインでも見られるようにすれば、日時や場所に縛られることなく、たくさんの人にリーチできる商材になります。


石田:当日に使うものだけではなく、事前の告知に用いるWebサイトのLP(ランディングページ)なども、ほかの用途で再利用しやすいような仕様にできるといいですね。展示会にまつわる制作物を「その場限りのもの」ではなく、「継続的に活用できる資産」に価値を変容させ、二次利用する計画をあらかじめ織り込んでおけば、クオリティの高いものを、コストをかけてつくりやすくなるはずです。




2. 滞在時間は10分程度。顧客にとって最良なシナリオを想定し、狙いを絞ったコンテンツを提供



確実なリード獲得のために展示会の企画で押さえるべきポイントとは?



山中:展示会で1つのブースの滞在時間は10分程度と言われています。その短い時間の中で、いかに相手のニーズをくみ取って深い対話ができるかが、新規リード獲得の大きなカギになりますね。


だからこそ出展者側は、「どのような目的を持った顧客をターゲットにするのか」「事前にどのような情報を出せばターゲットは興味を持つのか」「来たターゲットに向けて何を見せれば、その後の行動変容、商談につながるのか」といったシナリオをいくつか想定し、その狙いに沿ってLPやコンテンツを制作するべきです。労力をかけてたくさんコンテンツを用意しても、10分程度の滞在時間の中で顧客にリーチしきれなければもったいないですから。顧客のニーズをつかみ、そこに対してデジタルとリアルのハイブリッドで最適な顧客体験をつくっていければ、短い時間でも密度の高いコミュニケーションが取れるでしょう。


石田:限られた時間で、顧客を楽しませるという演出も大切です。例えば、ブース内にタブレットやタッチパネル型のモニターとVRやARなどのデジタルコンテンツ技術を活用したインタラクティブな体験ができるコンテンツを準備することで、パネルでは表現できない製品理解につながる情報を短時間で魅力的に伝えられます。展示会場で自社製品を知ってもらい、会期後の円滑な営業活動につなげていくために、会期中にいただいた名刺と各種データとのひも付け作業も重要です。
もちろんブース内で顧客が取ったアクションなどから推測されるニーズなども名刺データと同期できれば、その後の商談の質を大きく上げることができます。



効果的な展示ブース


DCDでは、こうした会期前・会期中・会期後のデザインやコンテンツ制作だけではなく、展示会で得られる情報の連携などもサポートできる体制を用意しています。




3. 一貫したコミュニケーション設計と、多彩なクリエイティブを生かした施策を



展示会はこれから先、どのような変化を遂げていくでしょうか? その中で、おふたりはどのような展示会をつくっていきたいと考えていますか?


石田:今後はさらに、環境に配慮した展示会の形が広がっていくと思っています。リアルとデジタルのハイブリッドな展開を模索することで、使い回せるものを増やし、小さいスペースで大きな効果を生み出す展示が可能になります。顧客への満足度を上げることと、無駄を減らして環境負荷を下げていくことは、きっと両立できるはずです。


加えて、オンラインの展示会はもっといろいろな工夫ができるのではないかと考えています。常設のオンラインコンテンツとは違った、その会期中に触れられるからこその特別感を演出しつつ、自社のブランドや製品への理解を促す方法を模索していきたいです。



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山中:展示会というとブースの装飾や派手な演出など、見えるところに注意がいきがちですが、私は「見えない所の設計」こそが大事だと思っています。会期中だけでなく、会期前・会期中・会期後と一貫したコミュニケーション設計ができているか、それが忠実に実行できるかが、成果を上げるために必要な視点です。


時代の変化にあわせて、これからも展示会の効果的な在り方は変化していくでしょう。そこでデジタルが発達してバーチャル空間のコンテンツが充実すればするほど、「対面で対話ができる場」の価値が際立ってくると考えています。そう思うと、そこに行きさえすればその道のプロから直接話を聞ける展示会は、ある意味「最高のおもてなしの場」と捉えられるのではないでしょうか。
DCDにはこれまで培ってきた膨大なサービス、クリエイティブのノウハウがあり、それらを組み合わせることで、多種多様な施策のアイデアをご提案できます。だからこそ、どんな業種、どんなニーズを持つクライアントでも、その時代に最適なソリューションを提供できると自負しています。会社やブランドにとって最も望ましい展示会の在り方を、クライアントの皆さんと一緒に創造していくことに、私自身とてもやりがいを感じています。ぜひ、まずは気兼ねなくご相談いただけるとうれしいです。


  • 2024年11月時点の情報です。

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