コーポレートブランディング向上へと導く「周年事業コンサルティング」とは

周年事業のプロ、榊の写真
▼語り手プロフィール
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
第4CXデザイン本部
榊 拓也/Takuya Sakaki

DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)では、企画・制作における、多くのコミュニケーションのプロが活躍しています。そうしたプロフェッショナルたちにスポットライトを当てる企画、題して「D-Professional」。第2回を迎える今回は、コーポレートコミュニケーション領域を軸に総合的な支援を行っている、コーポレートブランディングコンサルタントの榊 拓也です。企業が進め方や実行時に悩むことの多い「周年事業」のコンサルティング業務に焦点を当ててご紹介します。


【D-Professional】への7つの質問



1. 名前と社歴



榊 拓也と申します。2007年の入社以来、長らく映像制作を担当していました。さまざまな映像ジャンルに携わってきましたが、中でも会社案内や株主総会用映像といったコーポレートコミュニケーション(以下、CC)やコーポレートブランディング(以下、CB)領域のコンテンツ制作に多く携わってきた、という経歴を持ちます。2020年にコーポレートブランディングプロジェクトが発足したことをきっかけに、コーポレートブランディングコンサルティング部に所属。そこから周年事業コンサルタントとして、クライアントの担当窓口やプロジェクトマネージャーを担っています。


インタビューに応える榊の写真


2. 手掛けている業務



企業の周年事業におけるプロジェクトのはじまりにはさまざまなパターンがありますが、「年史をつくりたい」という相談からスタートすることが比較的多いですね。しかし、実際にお話をうかがうと、「年史をつくる」ことが目的になっていて、その背景にある目的や意図が十分に議論されていないケースも少なくありません。それでは、せっかくの周年という貴重な機会がうまく活用しきれずに過ぎ去ってしまいます。周年事業では、年史制作や式典開催などの「具体的な施策」に固執するのではなく、この期間を通じてCC/CB領域を見直し、企業価値の向上をめざす「機会」として捉えていくことこそが重要なのです。


そこで、クライアントの実情をヒアリングし、企業経営全体のことを見据えたコンサルティングを行うことが私たちの主たる業務。企業の持つ本質的な課題を抽出し、あらためてそれを起点とした施策提案を行います。例えば、社員のエンゲージメントが低い、離職率が高いといったインナーコミュニケーションの課題が見えてきた時には、社内交流イベントなどの企画だけでなく、TVCMを制作し放映するというのも一つの手です。周年をきっかけとして企業の名前や取組みを広く世の中に周知させることで、家族や友人に所属企業の存在意義や価値を知ってもらい、社員自身のモチベーションや帰属意識向上へとつなげていく。そんな企画を通して、周年事業をもっと意味のあるアニバーサリーにしてもらえるよう働きかけていきます。



図:周年施策の分類と目的

見据える方向性やコンセプトが見え具体的な施策が決まったら、DCD内の各制作のプロフェッショナルへと橋渡しをして実制作に移っていきます。各施策が意図と違った方向にひとり歩きしていかないよう、プロジェクト全体をディレクションしていくことも重要な業務です。


また、こうした一連の施策実施には、ほとんどの場合、クライアントの社長や役員レベルの承認が必要となります。したがって目の前の担当者だけでなく、その先の上司や役員への上申資料も一緒に制作し、全体を円滑に進められるようサポートしていくこともあります。周年事業は数年単位で動くうえ、やらなければいけないことや稟議(りんぎ)フローが煩雑になりやすい業務。各業務ステップの把握とコントロール、そしてそのサポートも大切ですね。



3. プロジェクトの大事なポイントは?



正直、周年事業は売上やエンゲージメントなどの「数字の結果」は見えにくいもの。費用対効果を具体的に測ることはなかなかできません。ただやるからには、周年に向けてどういう方向をめざしていくのか、周年事業展開の土台となるコンセプトや方針、スローガンの策定が非常に重要になります。そうすることで何をしていくべきかの軸がブレにくくなり、事業が推進しやすくなるのです。


コンセプト等を明文化する工程

とはいっても、費用対効果や結果の部分を求められるクライアントも多くいらっしゃいます。そこで実施するケースが多いのは、ビフォーアフターでのアンケート。エンゲージメント向上やインナーの意識変革などが数字として表れているか調査・報告をしています。


また、前の周年事業から数年経つと、先方の担当者が変更となっていることも多々あります。でもDCD側には周年事業関連のプロフェッショナルがそのまま在籍しているので、「前回も私が御社を担当しました!」というケースも多く、先方から「ぜひイチから一緒にお願いできますか」と頼っていただけることもありますね。最初から最後まで、すべてをこちらがリードしてスムーズに進行できる。これは年史編纂を50年以上手掛けるなど、周年事業に深く関わってきたDCDだからこその強みと言えると思います。



4. 譲れないこだわりは?



「型にはまらないこと」でしょうか。クライアントによってニーズも違えば費用感も違う。さらに考え方も千差万別です。だから最初は、「うちは周年事業はやりません」と言い切られることもあるんですよ。ただお話を深く聞いていくと、インナーコミュニケーションやブランディングの観点で課題を持っているパターンもあるので、その場合は「周年事業」という枠にとらわれず、その会社が良い方向に進めるようなCC/CB領域でのさまざまなアイデアをご提案していきます。臨機応変に多種多様な対応ができるプロフェッショナルや体制が整っているからこそ、真の意味でクライアントの課題解決につながるサポートができていると感じますね。


また、「こうあるべき、と自身のこだわりを持って決めつけないようにしていること」も、ある意味「譲れないこだわり」なのかもしれません。目の前のクライアントが抱える課題に対して、都度柔軟に自分がかたちを変えていくスタンスでいようと思っています。



クライアントとの打ち合わせ風景


5. この仕事の醍醐味(だいごみ)は?



打ち合わせの際、相手の想定を超えた提示や提案をすると、メモを取ってくれたり、深くうなずいてくれたりしますよね。そうやって、この道の専門家だからこそお伝えできることを通して、クライアントをリードできている感覚が持てることだと思います。やはり、「榊だからお願いした」と言ってもらえるとモチベーションは上がりますよ。


また、そのプロジェクトに携わる過程で、普通ならのぞけないような世界を見て聞いて知れるのも面白い。その企業のことを深く知れる仕事だからこその醍醐味(だいごみ)かもしれません。



インタビューに応える榊の写真


6. 今後挑戦していきたいことは?



今こうして周年事業を含めたCC/CB領域のお手伝いをしていること自体が、僕にとっての挑戦。企業ごとにまったく考え方が異なりますし、各プロジェクトが数年単位のロングスパンで進行するため、手探り状態で最適解を追い求めていく場面もまだ多くあります。だからまずは、ひたすら経験値を積んでいくことでクライアントからもチームのメンバーからもどんどん頼ってもらえるような存在になりたいですね。


そして「コーポレートブランディングコンサルタント」という肩書で活動させてもらっているからこそ、「コンサル」の名に恥じないよう、クライアントに適切な道を指し示していける存在でありたいと思っています。隣で伴走していく存在というよりも、先を見据えてリードしていくような導き手になりたいです。



7. あなたにとってプロジェクトの成功とは?



確固たる「軸」を持った周年事業が展開できていること。これが成功と言える理想像だと思います。でもまずは、その企業に適した強いコンセプトや方針を組み上げられたら、その時点で大成功と言えるでしょう。求められている方向性が見えてくると、「あ、この企業に対する理解が深まってきたな」と実感できて、それが楽しかったりもしますね。


自分自身がそのクライアントのことを「一番理解している外部の人間」になることができれば、各制作のプロフェッショナルへ橋渡しをする時に自らのフィルターを通せば正解が導き出せるようになる。そうすると、コンセプトに合致したアウトプットをご提供し、その周年事業が向かうべき方向へと導くことができると思っています。


  • 2024年11月時点の情報です。

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