CPAを大幅に改善!「Web×リアル」位置情報データを活用した効果的な広告運用とは

位置情報のイメージ
▼語り手プロフィール
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
店頭マーケティング担当者

「DMを送っているものの本当に効果が出ているのかわからない」「Web広告がどれほど来店や売上に貢献しているか測れていない」。そんな悩みを抱える事業者は少なくありません。特に、飲食や小売などの店舗ビジネスでは、広告が来店や購買にどのように結びつくかを正確に把握することが、事業の成長や売上向上の鍵となるでしょう。

大日本印刷(以下、DNP)は株式会社アドインテ(以下、アドインテ社)と資本業務提携を結び、ジオターゲティング広告サービス「AIGeo(エーアイジオ)」を活用したソリューションを提供しています。約9,000万の広告ID(※1)を保有し、顧客の行動データをもとにした精度の高いターゲティングが可能な「AIGeo」は、プロモーション戦略の最適化を助ける強力なツールのひとつです。

今回はDNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)がAIGeoを活用し、顧客の行動データから効果的なWeb広告を実施していることを事例とともにご紹介します。

  • 注釈1:広告ID:スマートフォンやタブレット端末などのデバイスに割り当てられた一意の識別番号のこと。リターゲティングやパーソナライズされた広告配信に利用されます。

1. 「広告効果が見えない」という課題をどう克服するか

まずは、DCDが位置情報データの活用を進めている背景を教えてください。

現在、企業が消費者にリーチするための広告手法は多様化していますが、その一方で「どの施策が本当に効果を上げているのかわからない」という課題が浮き彫りになっていると感じています。

例えば、新規顧客獲得を目的とした場合、DM施策は主に既存顧客へのアプローチにとどまり、ポスティングは見込みが薄い層にも広告費をかけざるを得ません。Web広告も、クリック数や視聴回数は分かるものの、実際に店舗への来店にどれだけ貢献しているかまではわかりづらい。さらに、Web広告配信を行うDSP(※2)では広告が表示される場所をコントロールできず、場合によってはブランドイメージに悪影響を与えてしまうこともあるでしょう。

こうした課題の解決に効果的なのが、位置情報データを活用したWeb広告配信。いわゆるジオターゲティング広告です。

  • 注釈2:DSP(Demand-side Platform):インターネット上のサイトやアプリに広告を配信することができるプラットフォーム。自動化されたオークション形式で広告枠を購入する仕組みで、ターゲットユーザーに効率よく広告を表示することが可能になります。
ジオターゲティングのイメージイラスト

ジオターゲティング広告とは?

位置情報をもとにした広告手法。
GPS、IPアドレス、Wi-Fiなどの位置情報技術を使用し、特定のエリアやユーザーに狙いを定めることができるだけでなく、行動履歴データから行動特性に合わせて広告のターゲットを絞ることができる。

ジオターゲティング広告とはどのような手法なのでしょうか?

これは、IPアドレスやGPS、Wi-Fiの接続情報などから位置情報を解析して、特定のエリアやユーザーに狙いを定めた広告配信が行える手法です。現在地だけでなく、行動履歴データも活用できるため、地域や行動特性に合わせた効果的な施策や来店者の計測・分析が行えます。

数あるツールの中でも、DCDが選んだのがアドインテ社の「AIGeo」。DNPは2021年に資本業務提携を結び、両社の強みを活かしたソリューションを提供しています。

AIGeoと他社のサービスの違いについて教えてください。

大きな特徴としては、高精度なターゲティングとセグメント設定の柔軟性だと思います。AIGeoはユーザーの性別、年齢、推定居住エリアなどの基本属性に加えて、日常の行動履歴も細かに分析しており、ユーザーの興味・関心をしっかりとらえられているんです。

そのおかげで、実際の行動履歴や生活パターン、嗜好(しこう)性を組み合わせた緻密なセグメント(絞り込み)を設定でき、狙いたいユーザー層に対してピンポイントでアプローチすることが可能です。その際、細かくセグメントしても、9,000万の広告IDがあるので母数不足の心配が少ないことも強みと言えますね。

さらに、Meta広告をはじめとした各SNS媒体を指定して配信することもできます。DSPをはじめとした他のサービスではこうした指定が難しいケースも多いのですが、AIGeoなら広告の掲載先が明確なので、より安心してプロモーション戦略を組み立てることができます。

2. 来店単価1/5を、セグメントと最適な予算配分で実現

実際に提案したプロモーション事例を教えてください。

全国に展開するアウトドア用品チェーンでは、春のキャンペーン告知の際にAIGeoを活用したWeb広告施策を導入しました。それまで行っていた施策は既存顧客へのDM送付のみ。今後は、既存顧客から新規顧客にまで幅広く訴求したいという要望に応えるため、次のようなセグメント(絞り込み)をご提案しました。

1つ目のセグメントは「自店舗に来店した履歴のあるユーザー」。これはある意味、DM施策の代わりとなるものではありますが、AIGeoなら住所を取得できていないユーザーに対してもアプローチすることが可能になります。

2つ目は「競合店を利用しているが、自店舗には来店していないユーザー」です。同ジャンルに興味を持つターゲットに絞り込むことで、完全な新規層を狙うよりも行動を喚起しやすく、効率的に認知を広げて店舗集客を促進できると仮定しました。

実際に提案したプロモーション事例のイメージ図

また、広告予算の配分にも、費用対効果を最大化する工夫を取り入れています。セグメント1では、全店舗を売上別に3つのグループに分け、それぞれに適した単価を設定しました。セグメント2では、都道府県ごとの競合店利用者の数にもとづいてグループ分けを行い、それに応じて予算を調整しています。

結果として、どのような成果をあげることができたのでしょうか?

従来のDM施策ではリーチ単価が141.7円だったのに対し、位置情報を活用したWeb広告ではわずか0.61円という結果に。加えて計測できた来店者数も伸びたことで、来店単価が大幅に改善。少なく見積もってもDMの1/5以下に抑えることができ、集客プロモーションの改善として大きな成果を得られました。
また、広告配信期間の来店ユーザー数は、競合店利用者が自店利用者の約1.3倍と、コストを抑えながら多くの新規顧客を獲得できたことがわかりました。

あらゆる目的に合わせて、柔軟にセグメント設定ができそうですね。

そうですね。仮に「まだ特定のブランドにこだわりのない準顕在層」を狙うとするなら、まずAIGeoで「自店舗・競合店舗ともに来店履歴がないユーザー」を絞り込みます。そして、各媒体で「スポーツ」「フィットネス」「自然」など、自社に関連するような興味関心カテゴリを設定すると、「同じジャンルの商品やサービスに興味はあるけど、実際にお店にまでは足を運んだことがないユーザー」にピンポイントで自社の認知を広めることができるんです。こうしたアプローチによって、広告費をムダにせず、より効果的なプロモーションが可能になります。

ターゲティングの例

3. 正しい分析力が、プロモーション戦略の最適解を導く

AIGeoを活用する中で、DCDならではの強みはどこにあるのでしょうか?

私たちは市場や競合の動きを詳しく分析し、ひとつの施策だけではなくプロモーション全体を最適化することで、確実な成果につなげていけることですね。AIGeoを使えば精度の高い広告配信が可能ですが、あくまでツールに過ぎません。その真価を発揮するには、「どのような考えでセグメントするか」と「収集したデータをどう分析するか」が重要なポイントになります。

例えば、先ほどご紹介したアウトドア用品チェーンでは、来店人数や利用金額を把握できるレポートを作成しています。キャンペーン期間中の各店舗のデータを詳細に分析してみると、8割以上の店舗がDM施策の来店CPA(※3)を下回る成果を出していたことがわかりました。一方で、まったく改善できず、思うような成果が得られなかった店舗も確認できたんです。

  • 注釈3:CPA(Cost Per Acquisition):来店や予約などのコンバージョン1件あたりにかかった広告費を示す指標。広告の費用対効果を評価する際に使用され、数値が低いほど費用対効果が良いとされています。
セール期間中の各店舗の来店者割合

その場合は、また別の施策を検討する必要がありそうですね。

その通りです。地域によっては、Web広告よりもDMやチラシといった紙ツールを工夫するほうが、より良い結果が得られる場合もあります。加えて、ターゲットごとに使い分けることも忘れてはいけません。今回は新規獲得を軸にAIGeoを採用しましたが、既存の優良顧客にはパーソナライズした「精度の高いDM」を採用することで、施策全体の運用効果を高めていくことが可能です。ただ、正確な効果測定ができていなければ、こうした判断も下せません。店舗ごとの数字をしっかり把握・分析することで、はじめてその店舗のユーザー層や地域特性に合ったプロモーションを検討できると考えています。

また、実際にどのような広告クリエイティブを制作するかを検討する際には、クライアントそれぞれの背景やコンセプト、クリエイティブのルール、トーン&マナーの共有、その商品をどう売っていきたいか、などブランディングが必要不可欠です。DCDならグループ内で適切なチームをすぐに編成し、施策の方向性に合わせたご提案をすることができます。

広告は一発打っただけで終わりでなく、仮定と実際のユーザーの反応を見て改善していく必要があります。良い結果が最初から出なかったとしても、ただの失敗で終わらせず、次の一手につなげられる連携力が私たちの強みです。

4. 位置情報データが変えるWebとリアルの連携戦略

今後、位置情報データをどのように活用していきたいと考えていますか?

Webとリアルの広告施策をよりシームレスに連携させ、実店舗とECサイトのプロモーション戦略を統合できないかと模索中です。まだ構想段階ではありますが、レシート限定や自社アプリ限定のクーポンを配布し、その使用率や購入履歴を分析することで広告の効果を精緻に測定できないか、より効果的な提案ができるようにアドインテ社とともに検討しています。

そうした連携が実現することで、どのような変化を期待していますか?

企業によっては、店舗とECサイトの販促担当者が別々に動いていることがあります。そこで意外だったのは、EC担当者は社内での競合を避けるために、実店舗のないエリアにだけWeb広告を配信するケースがあるということです。しかし、本来は対立すべき相手ではありませんよね。実際、実店舗を「ショールーム」のように使って、商品自体はECサイトで購入するユーザーもいます。どの広告が商品購入につながったのかを正確に把握できれば、社内競合を気にせずに、より効果的な戦略が実現できると考えています。

Webとリアルの連携を進めることで、プロモーション戦略の自由度が大きく広がり、広告の在り方自体が進化することを期待しています。そのためにも、位置情報データなどの技術やアイデアを取り入れ、革新的な価値を創出しクライアントへ提案していきたいです。

  • 注釈2025年6月時点の情報です。

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