強固なロジックで導き出す、データ分析にもとづいたエリアマーケティング「個店販促」の実力

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株式会社DNPコミュニケーションデザイン
第1CXデザイン本部
部長 今井 宏/Hiroshi Imai

多店舗展開する企業にとって、効果的な販促施策の立案は大きな課題となっています。全店舗で同じ施策を展開する従来型のアプローチでは、個々の店舗が持つ特性や可能性を十分に生かしきれていないケースが少なくありません。また、折込チラシをはじめとした販促施策の効果測定は難しく、どのメディアをどのように活用すべきか、明確な根拠を持って判断しにくい傾向にあります。

株式会社DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)では、大日本印刷株式会社(以下、DNP)の情報イノベーション事業部と連携し、商圏分析から効果検証まで、データにもとづいて個々の店舗に最適な販促プランを導き出す「個店販促」という新しいアプローチを提供しています。本記事では、第1CXデザイン本部の今井宏が「個店販促」の具体的な手法と可能性について解説します。

1. 店舗ごとの特性を最大限に引き出す、データ駆動型の販促アプローチ

「個店販促」とは、どのようなクライアントの、どういった課題感に対応するプランなのでしょうか?

個店販促は文字通り、個々の店舗で最適な販促を展開するためのプランニングです。現状、多くの店舗は折込チラシやDMなどを通じて販促を行うことで、一定のユーザーに効果的なアプローチができています。ただし、こうした従来の方法ではリーチしきれていないユーザー層が必ず存在しているのも事実です。個店販促はそこにリーチするための戦略を、それぞれの店舗の特性などを踏まえて個別に立案していく施策なのです。

個店販促とは:
従来の方法ではリーチしきれていないユーザー層を店舗ごとに導き出し、販促施策を展開すること。

個店販促とは、従来の方法ではリーチしきれていないユーザー層を店舗ごとに導き出し、販促施策を展開すること。
  • 注釈出典:技研商事インターナショナル「KDDI Location Analyzer」。auスマートフォンユーザーのうち個別同意を得たユーザーを対象に、個人を特定できない処理を行って集計しています。

チェーン展開によって多くの店舗を運営している企業は、すべての店舗で、あるいは一定の商圏内の店舗で同じ広告を配信することが少なくありません。実際には、店舗の規模や特性に応じて、立地条件や競合の状況、ユーザー層などに差異があり、有効な施策も店舗ごとに異なるはず。しかし、必要な費用やリソースが膨大であることや、施策の効果も確認しにくいといった理由から、個々の店舗レベルで広告の出し分けを実施している企業はほとんどないのが現状です。
私たちがそこを細かく分析して店舗ごとに合った広告展開の提案ができれば、企業の成長をさらにサポートできると考えています。

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2. 緻密な分析から具体的な施策の分析まで、かゆいところに手が届くサポート

DCDが提供する「個店販促」のプランとは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

個店販促の主な工程は「商圏分析、施策検討、施策展開、効果検証」の4つです。このサイクルでPDCAを回して分析や施策の精度を高めながら、成果を上げていきます。企業のニーズや予算に合わせて「個店ごとに分析だけ」といった部分的なメニューの提供も可能ですが、DCDとしてはDNPの情報イノベーション事業部と連携して、これらを一貫して手がけられるところが強みだと自負しています。

個店販促の運用について

商圏分析ではどのようなことをするのでしょうか?

大きく2つの分析手法があります。まず「商圏人口分析」では、国勢調査や独自のリサーチで得たデータを用いて商圏内のユーザー情報を分析し、各メディアの広告媒体としてのポテンシャルを診断します。これによって「今までは折込チラシに多くのリソースを投入していたが、実はデジタルメディアの方が相性がよい可能性が高い」といった状況を可視化できるのです。

店舗ごとに商圏5kmの世帯状況を調査

もう1つは「来訪者分析」です。通信会社の位置情報を用いて、自店舗の来訪者の性別や年代、居住エリア、リピート率などの属性を細かく分析して、打つべき施策の検討に生かしていきます。また、同様のデータを用いて競合店舗との比較分析も可能です。例えば「土曜日の夕方は競合に顧客が流れているから、特売商品を土曜日の前日に訴求して対抗しよう」といったプランニングがしやすくなります。

来訪者分析のデータイメージ
  • 注釈出典:技研商事インターナショナル「KDDI Location Analyzer」。auスマートフォンユーザーのうち個別同意を得たユーザーを対象に、個人を特定できない処理を行って集計しています。

こうした分析をもとにして、どのような施策の立案をしていくのですか?

出稿するべきメディアについては、独自の基準で作成した条件分岐チャートで診断します。「広告を出すべきメディア」だけではなく「広告出稿の優先度が低いメディア」「メディア別にどのようなコンテンツを配信していくべきか」といったところまでレコメンドできるのが特徴です。

配信メディアの種類については、オンライン・オフラインのさまざまな方法に対応。ユーザーインタビューや行動科学とAIを活用したデザインメソッドを用いて、より生活者に届きやすい効果的なクリエイティブを制作します。

施策の効果検証では、「リーチ数」「来店者数」「レジ通過数」など数値化しやすい項目でKPIを設定し、プロモーションの成果を確実に可視化。予算に対する費用対効果まで具体的に算出し、その後の施策検討につなげていきます。

3. 「感覚」から「根拠」へ ― 多岐にわたる個店販促のポテンシャル

実際の案件でどのような成果がでているのか、教えてください。

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直近では、広島を中心にスーパーマーケットチェーンを展開する株式会社イズミ様の一部店舗で導入しました。個店販促を行った店舗は、施策実施期間中に導入していない自社の他店舗と比較して昨対比104%の高い売上水準を達成しています。分析を継続して施策の最適化を図ることで、今後さらなる成果アップを見込んでいます。

クライアントからは「個店レベルでここまでの分析はやりたくてもできなかった」「広告を出稿するメディアの選定やデジタルチラシを配信するタイミングなど、感覚に頼っていたところを数値的な根拠をもって判断できるのがとてもありがたい」などと、ポジティブな評価をいただいていますね。

そのほか、全国展開している製造小売チェーンやファストフードチェーンなどでも提供を開始しています。効果測定までは完了していませんが、担当者からは「商圏分析は販促の検討だけでなく、リクルーティングや勤務時間調整を含めた店舗マネジメント、不振店や強化店の施策検討、新規出店の計画などにも生かせそう」という声も出ており、これから個店販促の活用の幅はさらに広がりそうです。

4. あらゆるメディアに専門性あり、ロジカルに効果的なクリエイティブを導き出すチーム力

個店販促のプランを実施するにあたって、DCDだからこそ提供できる強みとは、どのような部分にあるでしょうか?

店舗ごとに細かい運用ができることが大きな強みです。そのためのロジックを分析から確実に立てられることに加え、効果的なクリエイティブ制作の実績も豊富で、行動経済学にもとづくデザイン手法など独自メソッドも多数持っています。

また、アナログ・デジタル、あらゆるメディアにおいて専門性のあるチームがいることも特徴です。特にデジタルチラシ(LINEチラシ)などは得意分野で、社内でチーム同士が連携して、きめ細かい対応が可能となっています。

さらに、DNPグループではAI活用も積極的に進めており、小売業が新店舗をオープンする際の宣伝予算についてAIを活用して最適化するサービス「DNP販促最適化AI」をリリースしています(※)。

個店販促の今後の展開について教えてください。

店舗の販促にまつわるすべての業務を、自分たちが提供している個店販促のロジックで最適化できる状態をめざしています。私たちがクライアントの販促予算の全体を管理して、数百ある店舗の販促を個別に最適化して展開することで、プロモーション効果を最大化できるのが理想です。新規出店のコンサルティングまで含め、多店舗展開の上流の戦略立案から伴走していきたいと考えています。

どのような企業に個店販促を勧めたいですか?

基本的には店舗運営をしているあらゆる企業に有効なプランだと考えています。中でも、多店舗展開をしている小売企業や飲食チェーンなどは相性がいいでしょう。

「販促はしているものの、効果が今ひとつわからない」という声はよく聞きます。現状の販促に課題は感じているものの、何を根拠にどう変えるべきか悩んでいたら、ぜひ相談していただきたいと思います。

個店販促の担当メンバー。
(写真左から)DNP 情報イノベーション事業部 樋口 和寛、リーダー 高山 俊、 DCD 今井 宏
個店販促はDNP 情報イノベーション事業部が主幹部門となり、DCDと連携して進めています。
  • 注釈2025年8月時点の情報です。

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