社内報だけではない!3万人規模の企業が挑む、エンゲージメント向上への新アプローチ

大日本印刷株式会社
コーポレートコミュニケーション本部 社内コミュニケーション戦略室
室長 庭山 貴嗣/Takashi Niwayama
グループで3万人を超える従業員に対して高い目標を掲げてエンゲージメントの向上に取り組んでいる企業があります。大日本印刷株式会社(以下、DNP)のコーポレートコミュニケーション本部は、従来の社内報中心のコミュニケーションから大きく舵を切り、各部署が主体的に情報発信できる環境整備に力を入れています。
「紙の社内報の制作には1冊あたり3カ月程度かけており、掲載できる情報量も限られているため、各部門からの要望に応えきれない」、また「Web社内報では日常的にパソコンを利用していない製造部門には情報が届きにくい」といった課題を抱えていたDNPが、どのように多様なコミュニケーション手法を構築し、グループ全体のエンゲージメント向上に取り組んでいるのか――。
エンゲージメントを切り口にして活動を変革する考え方と、その具体的な施策について、同本部の社内コミュニケーション戦略室の庭山貴嗣室長に話を聞きました。
1. アクションプログラムの刷新で見えた、社内コミュニケーションの課題と可能性
社内コミュニケーション戦略室の取り組みと、具体的な目標について教えてください。どのような経緯で設立された部署なのでしょうか?
もともとは広報室が再編された際に、投資家対応と対外広報を担当する「IR・広報本部」と、その他の社内外のコーポレートブランディング全般に関する役割を担う「コーポレートコミュニケーション本部」の2つに分かれました。
私たちは、社員向けのコミュニケーションを担う部署としてさまざまな施策を展開しています。
具体的にはどのような目標を設定されているのでしょうか?
目標としては、2030年度までに80%以上の従業員を「DNPファン」にすることを掲げています。この目標の指標としているのは、エンゲージメントサーベイの数値です。9つある項目のうちの「理念戦略」「組織風土」で、ベンチマーク(他社のスコアと比較して分析するための到達指標)に対して非常に高い目標を設定しています。これを達成するため、2年前に活動方針を刷新しました。

それまで、社内コミュニケーションにはどのような課題があったのでしょうか?
以前は社内報や社内イントラに掲載するWebニュースの制作が主な業務で、我々自身のリソースの大部分を社内報などのメディアに割いていました。
結果的に、悪い言い方をすれば「我々がいいものをつくること」が目的になってしまっていた側面がありました。また、各部署から「こういう情報を載せてほしい」という要望があっても、従来の紙の社内報の制作スパンだと、要望を受けてから掲載に至るまで3〜4カ月かかることもあり、即時性に課題がありましたし、限られたリソースの中で掲載自体をお断りするケースもあったのです。
ただ、エンゲージメントを飛躍的に向上させていくという目標にあらためて向き合った結果、そもそもエンゲージメントに関わるような情報発信をしているのは我々だけではありませんし、自分たちが制作したものだけで、この目標を達成するのは難しいことを認識しました。
そこで、あらためて自分たちの役割を「DNPファンをつくり出すために、コミュニケーションを最適化する」「そのために部署横断的なコミュニケーションの最適なプラットフォームをつくる」と活動方針を再設定したのです。
そして、自分たちがコンテンツを制作することにこだわるのではなく、各部署が従業員に周知したい情報を自ら伝えられるように全グループ発信のプラットフォームを整備し、そこでの発信の助言や支援に重点を置くようにしました。社内報は引き続き制作していますが、あくまで「多様な発信方法のひとつである」という位置付けにしています。

2. 社内報以外の発信プラットフォーム構築―具体施策3点をピックアップ
活動方針の刷新以降、どのような社内プラットフォームの整備・発信支援に力を入れてきたのでしょうか?
さまざまな取り組みがあるのですが、ここではその内の3つをご紹介します。
①DNP News 60

月に1回、60秒程度の短時間動画で情報をコンパクトに伝達する動画ニュースの配信を社内向けWebとデジタルサイネージで同時展開しています。これを始めた主な目的は、紙の社内報の弱点である制作期間の長さを解消することと、パソコンを日常的に利用しない製造部門も含めて、休憩所やエレベーター内に設置した社内サイネージを通じて、即時性の高い情報発信を実現することです。
現在、「動画(DNP New60)で情報を発信したい」といった各部門からも要望も受けるようになり、社内発信の相談を受けた際の提案バリエーションも拡がりました。課題を踏まえて策定した媒体計画に対し、「狙い通りの取り組みになった」と手応えを実感しています。
②DNP Family Day

家族を主な対象としながら、従業員にも会社への理解を深めてもらうことを目的に、「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン:多様性と包摂)」の一環として実施しているイベントです。2025年は本社のある東京・市谷地区のほか、国内外16の支店で開催しており、支店ごとの特徴を活かして、DNPをよりわかりやすく理解してもらえるコンテンツをそれぞれ用意してもらっています。
市谷地区では、AI技術やドローン、VR(仮想現実)の体験など、当社の事業を体験できる企画を各部門が出展したほか、子どもでも楽しく読める「やわらか会社案内」を制作するなど、会社をわかりやすく紹介して好きになってもらう企画を多数用意しています。来場者にはとても好評で、今後はさらに施策を充実させていきます。従業員の家族も含めて、DNPをより理解してもらえる良い機会になっていると思います。

③デジタルサイネージの活用改革

製造部門への情報伝達を強化する手段として活用しています。当社の「SmartSignage(※)」というサービスを使ってコンテンツを展開していますが、より魅力あるコンテンツを提供し、多くの拠点がサイネージを新設したいと思ってもらえるように、2024年度は動画コンテンツなどを充実させました。
具体的には、従来利用していた定型の受付フォーマットを撤廃し、動画コンテンツの充実、文字だけだった情報に視覚的な工夫を追加しました。各部署が自主的にコンテンツ制作できるよう支援した結果、コンテンツの質と多様性が向上し、各部署の多様な情報発信が活発化しています。情報伝達手段として手応えを実証できたため、今後はより多くの部門からの情報発信を増やしていきたいと思っています。
- 注釈「SmartSignage」は、「DNPサイネージ配信管理システム SmartSignage」の略称です。
3. 各部署との連携を深める運用の工夫と、エンゲージメント向上への道筋
社内コミュニケーションの取り組みを全グループに浸透させるために、どのような工夫をされていますか?
まだまだ道半ばですが、実際に行った施策について可能な限り効果検証をして、具体的な改善ができるように心がけています。例えば、社内報では、読み手の反応まで追い切れていなかった従来の反省を活かして、アンケート回収率やWeb版のPV(ページビュー)数などを詳細に分析し、その後の改善に反映しています。取得したアンケートの内容は、自分たちのチームだけではなく、改善が必要な場合には該当部門にもフィードバックしています。

どんなにいい施策を用意しても、使ってもらわなければ効果は発揮されません。例えば、社内報であれば、つくって終わりではなく、必要に応じて、特定の部門の”朝礼”に参加したり、ポスターやサイネージをつくったりして、「読んでほしい!」と発信しています。「これらの施策が望ましい『エンゲージメント向上』につながるまで責任を持つ」という姿勢を大切にしています。
他部署との連携で重要なポイントは何でしょうか?
「その部署が抱えている課題、悩みに寄り添うこと」だと思っています。社内コミュニケーションで悩んでいる部署があったとして、その背景にある課題は「どうやったら社員に伝わりやすいのかわからない」「ツールの使い方がわからない」「発信する内容が思いつかない」などとさまざまです。
それを踏まえると、単純に「このツールを活用してください」と話して回るだけでは、あまり効果はありません。まずは「どういうところに困っているのか」を部署の担当者にヒアリングするところから始めて、その部署が抱えている不安や課題を把握して、ともに解決策を考えていく必要があると思っています。

DNPコミュニケーションデザイン(DCD)は、DNPグループをはじめとする多くの企業様へのインナーコミュニケーション支援で培ったノウハウや経験を活かし、効果的で運用しやすい現実的なご提案を行っています。社内コミュニケーションの課題解決や従業員エンゲージメント向上にお悩みのご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。