リテール業界で磨かれた伴走力。クライアントの想いを着実に具現化するプランナー

株式会社DNPコミュニケーションデザイン
東日本CXデザイン本部
国分 裕一郎/Yuichiro Kokubun
DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)では、企画・制作における、多くのコミュニケーションのプロが活躍しています。そうしたプロフェッショナルたちにスポットライトを当てる企画、題して「D-Professional」。今回は、リテール業界のクライアントに伴走し、さまざまな販促ツールの企画・制作を専門とする東日本CXデザイン本部の国分裕一郎です。
【D-Professional】への7つの質問
1. 名前と社歴
少数精鋭の環境で鍛えられた対応力を武器に
国分裕一郎です。福島県出身で、宮城大学のデザイン情報学科で映像制作などを学んでいました。そこから広告業界への興味が湧いて、2011年にDNP東北に総合職として入社しました。
最初の3年間は営業職でしたが、学生時代から企画職への憧れがあり、希望を出したところ、ご縁に恵まれて企画職への異動がかないました。その後、企画業務を経て、2015年にDNPメディアクリエイト(DCDの前身)に出向。同年10月に栃木県宇都宮営業所に転勤となり、全国展開しているドラッグストアなどを担当しました。2020年に現在の部署に配属され、今は故郷である福島県の郡山にて勤務しています。
自分のキャリアの中心となっている東北エリアでの仕事は、少数精鋭で対応しなければならない場面が多いです。そのため「できるだけ自力で対応する力」が培われ、精神的にも能力的にも日々、成長させていただいています。「お客様のやりたいことは、どんな形でもかなえたい」という意識で必死に仕事に打ち込んできた経験が、今の仕事に生きているなと感じています。
2. 手掛けている業務
チラシからLP、ショート動画まで手がける、一貫した販促サポート
現在の業務の大部分は、スーパーマーケットなどのリテール業界のクライアントに対する販促サポートです。最初は折り込みチラシの制作を担当していましたが、現在は定期的に開催される催事用チラシやその販促プロデュースなどが主な業務になっています。
具体的には、催事で扱う商品の試食会に参加し、バイヤーの意見を取りまとめ、素案となるチラシのラフを作成してプロモーションの方向性を決めていきます。クライアントからチラシの素案の承認を得られた後は、そのデザインの方向性・コンセプトをもとに、YouTube動画広告を中心としたWeb広告の絵コンテ作成や、催事の魅力を伝える店内放送のディレクションを行っています。Web広告の配信については主にコンテンツ面から、広告の最適化をめざして他部門と連携し、制作にあたっています。
その後、クライアントと相談・調整、他部門および同じく販促活動を担う他社とも連携しながら、各種プロモーション媒体の制作から入稿までを一貫して管理しています。また、テレビCMの配信映像のディレクション・制作にも携わらせていただいております。こうしたさまざまな制作物のビジュアルやコピーは、すべて私が最初に制作するチラシのコンセプトを起点としているので、とてもやりがいを感じています。

3. あなたの強みは?
1を聞いて10に近いアウトプットを提案、それを可能にする関係構築の心得
クライアントから特に評価をいただいているのは、細かいオリエンがなくても、「1伝えれば8〜9くらいの完成度でフィードバックしてくる」という対応力です。販促の現場は流動的で、事前に詳細なオーダーシートをいただき、オリエンが実施されるということは多くありません。クライアントが多忙なため、オーダーが詳細に言語化される前に依頼をいただくこともあります。そこでこれまでの催事の特性や担当者の意図をくみ取り、期待に応えられるような提案ができることが強みだと思っています。
こうした対応力を発揮するためには、クライアントとの信頼関係の構築が不可欠です。コミュニケーションの量と質のどちらも大事にしながら、苦楽をともにするような経験を積み重ねていくことで、クライアントの「好き/嫌い」と「得意/不得意」が理解できるようになります。そこを見極めて、相手の「不得手な部分」で自分ができることを、積極的にフォローしていくことで、信頼を得ているような気がします。
元々はコミュニケーションが苦手で、昔は電話応対や送り状の作成はおろか、クライアントとのやり取りがチグハグになってしまう「カンの悪い社員」でした。失敗や挫折のたびに「これじゃダメなんだな」「どうしたらうまく対応できるのか」と粘り強く考え続け、なんとか自分を変えようと努力を続けたことが、今の強みにつながっていると感じています。
4. 譲れないこだわりは?
混沌(こんとん)の中にもストーリーを。的確に伝えきるコピーとレイアウトの美学
作っている販促物については……自分でいうのもなんですが「こだわり」しかないですね。流通のセールスプロモーションは、行動経済学と密接に関わっています。チラシのデザインでの顧客誘引はもとより、さまざまな販促物においてもターゲットがコンタクトをとった時に、数秒で来店・購買の動機づけを促す瞬発力が求められます。そのため、そこを強力に促す武器となるコピーに使用する文字・言葉のチョイスに、特に心血を注いでいます。「クリエイティブの良しあしは、細部にこそ宿る」と信じています。同じ言葉が入らないように言い回しを変える、語感の良さを重視する、ビジュアルと文字の組合せが適切か位置関係を検証するなど、細部まで気を配っています。
デザイン面でも、文字の大きさや配置を微妙に変えながら、ベストな構図に行き着くまで試行錯誤を繰り返しています。チラシのように情報量が多い媒体のデザインでは、特に「伝えるべき情報を埋もれさせない」ことが重要です。載せたい情報を網羅しつつも、しっかりと見せ方で強弱をつけて、全体としてのまとまりやストーリーを生み出すのは、難易度が高いんです。
ただ、難しいからといって、中途半端な出来のものは絶対に出したくない。自分が「美しい、素晴らしい」と自信を持って相手に提案できるものに仕上げることが、私の譲れないこだわりです。
5. この仕事の醍醐味 (だいごみ)は?
言葉ひとつでも手抜きなし、誰にも代替できない価値を生み出せる瞬間
特に醍醐味(だいごみ)を感じるのは、キャッチコピーで良いフレーズを思いついたときです。語感や響きを考慮しながら、パズルのように言葉を入れ替えるという行為を、納得がいくまでトライする。すると、唐突にバチッとハマる瞬間が訪れる……それがとても気持ちいいんです。十分に考え抜いた末に、これしかないと思えるコピーが出てきたとき、「誰にもまねできない仕事ができているな」という大きな達成感が得られます。
6. 今後挑戦していきたいことは?
「来店まで」を「購買まで」に拡張、クライアントに貢献できる手段を増やす
リテールの領域で挑戦したいのは、現在手がけている各種の制作物に加えて、実店舗内のPOPや装飾のディレクションにも関わっていくことです。現状は「お客様の来店のきっかけを作る仕事」が中心ですが、そこからもう一歩踏み込んで「来てくれたお客様が実際に購入するところまでのサポート」を一貫して、プロデュースできるようになれたら、もっとクライアントの売上げに貢献できるはずです。
あとは、Webサイトにおける広告の効果測定のノウハウをより深く学んで、自分の仕事に活用していきたいです。いま、とある衣料品の販促で効果測定のレポート作成に取り組んでいて、自力でPDCA(※)を回せるようになってきました。今後はさらにWeb広告における効果検証の知識のインプットと実地での経験を積みながら、多業種でこのスキルを応用できるようになりたいと思っています。
- 注釈PDCA:Plan(計画)Do(実行)Check(評価)Act(改善)のサイクルを繰り返すこと。

7. あなたにとってのプロジェクト成功とは?
メール1通、電話1本が心の支えに。感謝こそモチベーション
数値的な貢献は大前提として、やはりクライアントから直接「日頃から尽力してくれてありがとう」といった感謝の言葉をもらえることだと思っています。
とりわけ成功を実感するのは、わざわざお礼を伝えることだけを目的とした電話やメールをもらえたときです。対面での打ち合わせや業務上のやり取りの延長線上でおっしゃっていただけるのももちろんうれしいのですが、個別に「国分さんに任せてよかった」などと感謝のメッセージをもらえると「本当に評価してもらえているんだな」と感じて、心の底から喜びが込み上げてきます。
リテール業界はスピード重視でタフな環境ですが、だからこそクリエイティブにこだわったときに、得られる手応えや経験値が大きいと感じています。これからもクライアントに「やっぱり国分はわかっているな」と思っていただけるような関係を築き、行動経済学の考え方をベースに用いながら、阿吽(あうん)の呼吸でスピーディーに、期待値を超えて心を動かすような販促の提案をし続けていきたいです。
- 注釈
- 注釈2025年11月時点の情報です。