1秒で心をつかむ「瞬発力」と、継続的な接点設計
― DM(リアル)×デジタルで実現する顧客育成の全体設計

株式会社DNPコミュニケーションデザイン
第1CXデザイン本部
高野 廣大/Kodai Takano
DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)では、企画・制作における、多くのコミュニケーションのプロが活躍しています。そうしたプロフェッショナルたちにスポットライトを当てる企画、題して「D-Professional」。今回は、ダイレクトメール(以下、DM)施策を主軸に、会員や顧客の継続的な育成を支援するDMコンサルタントの高野廣大です。
【D-Professional】への7つの質問
1. 名前と社歴
カタログからDMまで ─ 多様な媒体経験が今の仕事の糧に
高野廣大です。2010年にDNPメディアクリエイト(DCDの前身となる会社の一つ)に入社し、今年で16年目になります。入社してから数年は、さまざまな企業のカタログの企画制作を担当していました。その後、パッケージデザインのディレクションやショールームの展示コンテンツの制作、CSR関連の企画など、媒体や業界を問わず幅広い業務に携わってきました。
現在は、主に通信業界のクライアントを中心に、顧客とのコミュニケーション施策としてDMやメールマガジン、Webサイトなどの媒体を活用したサービス告知の企画立案や店頭ツール、来店誘因施策の立案などを手掛けています。中でも最近は、契約顧客に向けたDMを中心としたコミュニケーション施策に注力しています。

2. 手掛けている業務
課題分析から効果測定まで ─ DMを起点とした顧客育成の全体設計
DMは、「クライアントの要望通りにDMを作って発送する」だけでは完結しません。DMから遷移させるLPの設計、DMを発送したあとに顧客に配信するフォローアップメールの検討などを含めた「DMを起点とした顧客育成」の全体設計を一貫して行っています。
DMづくりの基本的な工程は「クライアントからのオリエン→ターゲット属性を踏まえた訴求内容の検討→行動変容までのシナリオ策定→DMのコピーやデザイン作成→印刷・発送→効果測定」という流れです。
とりわけDMにとっての軸となるのが、行動変容までのシナリオ策定です。「どういうマインドを持っている人たちなのか」「その人たちに興味を持ってもらうには何が必要か」を整理し、顧客がDMを受け取ってから申込みや来店といった具体的な行動に移すまでのシナリオを構想します。
効果測定については、紙媒体なので正確に数値化しづらい部分もありますが、DMに記載した二次元コードからの遷移率を測定するなど、工夫しながら行っています。顧客ごとにパラメータを付与した二次元コードを印字することで、例えば「顧客Aさんは、DMが届いてから何日後にリンクを読み込んでいる」といった情報まで収集することも可能です。
ただ「DMが来た」という一度の接点だけでは、顧客の行動変容は起こりにくい。DMを起点に、後日メール配信をしたり、DMの二次元コードを読み込んでくれた関心が高い顧客に対してテレマーケティングでのフォローアップを行うなど、継続的なアプローチにつなげていくことで、DM施策はより効果的なものになっていきます。
3. あなたの強みは?
クライアントと生活者のバランスをとりながら、「瞬発力」のある表現をひねり出す
ターゲットである「生活者」の視点を想像することは、自分でも長けているのではないかと思っています。こういう仕事を長くやっていると、どうしてもクライアントの視点に寄りがちになります。ただ、「クライアントが伝えたい情報」と、「生活者が求めている情報」には、往々にしてズレが生じるもの。クライアントと生活者、双方のニーズを解像度高く理解して、両者の間をつなぐにはどんな要素、どんな言葉が必要か……と考えることを、日頃から大切にしています。
あとは「瞬発力」のあるコピーやデザインを見極めることも、比較的得意かなと。じっくり読まれるカタログと違って、DMは一目で「これは自分にとって価値があるかどうか」を判断される媒体です。だからこそ、1秒で注意をひき、開封させるような「瞬発力」が試されます。
例えば、KDDI様のシニア向けスマホ「BASIO active2」を既存ユーザー向けに訴求するためのDMでは、社会的な関心事である「防犯」をフックに、新型機種を「防犯機能搭載スマホ」と定義。その上で、封筒では黄色と緑のカラーリングで「安全=防犯」を表現し、一瞬見ただけでも強く印象に残るようにデザインしました。このDMは約30万通を発送し、同機種過去最高の機種変更伸長率(※)を記録しました。
- 注釈2024年6月に30 万通を発送し、同機種過去最高の機種変更伸長率340%を記録しました。(KDDI様調べ)

どんな編集、どんなコピー、どんなデザインが生活者の心に刺さるのか ― それを最後まで妥協せずに考え抜く粘り強さは、かなりあるほうだと自負しています。
4. 譲れないこだわりは?
企画提案には、相手がわかりやすいエビデンスを
クライアントとのコミュニケーションにおいて、「企画の裏付けとなるエビデンスを用意しておくこと」は、常に重視しています。行動変容までのシナリオやデザインの検討などでは、気をつけないと判断基準が主観的になりがちです。
過去に実施してきたDM施策のレビューやユーザーリサーチを行ったり、DNPの行動デザイン(※)のメソッドを活用したりしながら、クライアントに「なぜそうなるのか」「なぜそのほうが良いのか」を論理的にわかりやすく説明するように心がけています。
- 注釈DNPの行動デザインとは、行動経済学や行動科学の知見をもとに、人の行動変容や習慣化を支援するデザイン手法です。生活者が「やらなければいけない、するべきだ」と思いながら、なかなかできないことについて、製品やサービス、環境のデザインを通じて、その行動の実現を後押ししていきます。

5. この仕事の醍醐味 (だいごみ)は?
企画の点が面になっていく瞬間のやりがい
DM施策に限らず、プロモーション領域にまつわる仕事の醍醐味は「企画の裁量が大きいこと」だと思っています。フレームや制約、目的、目標はあるものの「それらを達成するために何をすべきか、どのようなアウトプットにするか」は企画次第。だからこそ、最終的には同じゴールをめざすとしても、企画それぞれにアウトプットの形が違ってきて、そこに面白みがありますね。
前述の通り、DM施策の目的は往々にして「DMを作ること」ではなく、問合わせや申込みの獲得などを含めた「顧客育成」です。だからこそ、DMにメール配信をはじめとしたさまざまなデジタル施策を組み合わせて、相乗効果を発揮させることが大事なんです。狙った施策がハマると、当初は「DMを作る」という点から始まった仕事ですが、与件を超えた追加施策が採用されることもあります。そんな、成果に応じて面のようにプロジェクトが広がっていくところにも、すごくやりがいを感じています。

6. 今後挑戦していきたいことは?
効果測定のメソッド開発と、リアル×デジタルの強化
DM施策での効果測定の精度を上げていきたいです。記載した二次元コードのアクセス解析で得られる情報は、まだまだ断片的ではあります。より効果的な施策の振り返りや検討ができるよう、新たなDMの効果測定の指標やメソッドを開発していきたいですね。
デジタルの広告施策が主流になってきている中ではありますが、紙のDMは顧客の印象に深く残る重要なタッチポイントとなっています。「実物が届く」という手触りのある体験に、デジタルにはない訴求力があるからこそ、企業はコストをかけてDM施策を続けています。これからもデジタルとアナログ、それぞれの長所をうまく生かしながら、クライアントにしっかりと費用対効果を実感してもらえるDM施策を提案していきたいと考えています。
7. あなたにとってのプロジェクト成功とは?
みんながハッピーに ─ 過程を大切にする関係性の構築
子どもっぽい表現かもしれませんが「みんながハッピーになること」だと思っています。そのために、目的を達成するためのプロセスで、クライアント・DCDとDNPの関係部門・パートナー企業の4者が同じ目的に向かって共通認識を持つことを大事にしたいです。
仕事だから「楽しい」要素ばかりではありませんが、ポジティブな気持ちでより良いものを求める意識は、いつでも忘れないようにしています。そういう気持ちや姿勢が周りに伝染していって、結果だけでなく、そこまでのプロセスを皆がたたえあえる関係になれたら、そのプロジェクトは間違いなく成功だと思います。
- 注釈2026年5月時点の情報です。