コラム

紙カタログの技術と経験をデジタルに活用
ビジネスに変革を起こすWebカタログのUX設計プロジェクト

▼語り手プロフィール
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
第2CXデザイン本部
(左から)高橋 成一郎/Seiichiro Takahashi、室谷 美里/Misato Muroya

BtoB企業の製品カタログは、デジタルシフトで進化を遂げている!当社がリードした「Webカタログ」UX設計プロジェクト事例を紹介

「カタログと言えば紙もの」の時代からデジタルシフトが進み、現在はWebカタログが多く見られるようになりました。その形態も、紙のデータをサイトに転用するデジタルブック形式から、Web用に新たに構築し直すものへと進化を遂げています。

こうした流れを鑑み、紙からデジタルへの転換を検討している企業も少なくありません。カタログの形態変更は、ステークホルダーに影響を与えるだけでなく、売り上げを大きく左右する可能性を持つもの。企業にとっては大きな経営判断となるのではないでしょうか。

DNPグループの一員であるDNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)は、これまでのカタログ制作で培ってきたノウハウを駆使し、媒体に関わらず、時代や顧客の実態に合わせたカタログを制作しています。今回は、1,000ページを超える厚物の紙カタログをWebカタログに移行した、メーカー企業様とのプロジェクト事例をご紹介。本件を担当したメンバー2名へのインタビュー形式でお届けします。

1.【背景】お客さまも手探りな状態でのスタート。伴走型のサポートでプロジェクトをけん引。

— はじめに、メーカー様とのWebカタログ制作がスタートした経緯をお聞かせいただけますか?

高橋:2013年から、継続的に紙の総合カタログ制作を担当してきたのが大きなきっかけです。実はその当時から「いずれ紙の総合カタログは縮小し、将来的にはデジタルに完全移行する」という話が出ていました。そこで当社としても、デジタル移行にあたってのご提案を何度かさせてもらっていたんです。ただそのときは、先方もまだ紙カタログをメインツールとして重宝していた時期。すぐに採用されるということはありませんでした。

室谷:その後も継続して、先方担当者と連携を取りながら紙カタログを制作してきたんですが……2021年に突如、先方社内で「紙をやめてデジタルにする」という決定がなされたんです。急な決定だったことから明確なゴールも定められておらず、先方担当者も手探りで進めるしかない状態でした。

高橋:結果的に、他の制作会社やシステム開発ベンダーの方を含めた複数社でのコンペが開かれましたね。そして最終的に、Webカタログの制作も継続して当社にご発注いただけることになったんです。

室谷:単純にシステムを整備してWebに載せるだけだったら、他社に軍配があがったかもしれません。しかし私たちには、緻密な製品仕様やラインアップの全体像を把握しているディレクターがいます。 そして、これまで培ってきたカタログ制作の知見を生かし、答えが見えにくい状況下でも、一緒に悩んでベストな方法を模索してきました。こうした豊富な経験と、時に伴走し時にリードするという私たちのスタンスが評価されたのかなと思っています。

2.【手順】進行過程で、要件が大幅に拡大。グループの力を結集しベストなカタチに。

— 受注後は、どのように進行したのでしょうか?

高橋:当初のオーダーは、クライアントがすでに所有しているバックエンドのデータベースを活用し、紙カタログをデジタルに置き換えてほしい、というもの。しかしプロジェクトが進行する中で、このデータベースとは別の社内用システムもここに統合したい、という話が挙がってきました。つまり、「既存のデータベースを活用したWebカタログ化」から、「新たにデータベースを用意し、統合作業をした上でWebカタログとしてアウトプットする」という依頼に切り替わったのです。

— 業務範囲が一気に広がった、ということですね。

高橋:はい。しかしここまでの規模となると、DCDチームだけでは実現が難しい。そこで、DNPグループのネットワークを使って、システム開発を得意とするDDS(DNPデジタルソリューションズ) との協力体制を築き、DNPグループ全体でこのプロジェクトに臨むことにしました。要件の変更にともない新たなデータベースを用意する必要も出てきたため、DNPが保有しているソリューション「DNP商品情報管理システム PROMAX NEO(プロマックス ネオ)」を導入。これにより、無事に希望通りのWebカタログを納品することができました。

— 制作期間中は、クライアントとどのような連携体制を取っていましたか?

高橋:紙カタログであれば基本はクライアントの担当部門だけとのやりとりで完結していましたが、本件では先方の情報システム部門との連携も必要でした。より先方企業の中に入り込む進め方になり、3~4カ月間はほぼ先方のオフィスに常駐していましたね。都度その場で確認をとり、打ち合わせも即座に開く。そんな密な連携体制だったからこそ、無事完遂できたのだと思います。

室谷:紙かWebかに関わらず、カタログは制作期間が長く関わる人も多い制作物。だからこその難しさがあるので、関係者全員が明るく前向きに取り組めるように気を配りながら進めました。

3.【強み】要件定義からUXの設計まで。紙カタログ制作の技術を、フルに応用。

— 紙からWebへ移行するにあたり、注力したポイントを教えてください。

室谷:「カタログをWebで見られるようにしよう」と考えたとき、これまでは紙用につくったPDFデータをWebサイトに載せるというやり方が主流でした。でも今回は、「顧客が製品を探す」という体験そのものをWebに落とし込むプロジェクト。「そもそもカタログはどんな場面で使われているのか」「お客さまはどうやって製品を探しているか」というスタート地点に立ち返って、UIやUXを構築する必要があったんです。PDFを載せるのとは別次元の難しさで、「顧客目線でどんな検索軸をつくるか」「どんな見せ方をするか」などの検討にかなり力を注ぎました。

高橋:今回のクライアントの場合、特にカタログ閲覧をする想定層がかなり幅広かったんです。実際に使用するユーザー、導入決定権のある企業、この製品を取り扱う代理店、はたまた自社の営業担当……どのターゲットを重視するかは、先方担当者も決めかねているような状態でした。

室谷:実はこの悩みは、紙カタログの時代からあったもの。その事情を十分理解しているからこそ、この悩みを先方と共有しながら、そして解釈し直しながら、一緒に最適解を探すようにしました。

— 印刷会社のDNPグループであるがゆえに、DCDは「紙」のカタログに強いというイメージがある方も多いと思います。無事デジタル化を成功させた裏には、どのような秘訣(ひけつ)があったのでしょうか?

室谷:確かにDCDは、紙もの制作を中心としてきた従業員が多い会社です。しかし媒体に関わらず「カタログ」をつくり続けてきた経験は、Webカタログ制作においても必要不可欠でした。データベース構築には、製品管理のしやすさやメンテナンス性を考慮した設計が重要です。これは紙カタログ制作における製品理解や全製品を体系化する技術が直結する部分。また製品画像やCG、図面といった素材づくりもすべて当社で担ってきたので、この技術もWebカタログにそのまま活かすことができています。

高橋:「データベースシステムにどんな構造を持たせるべきか」という課題は、システム開発の企業側ではサポートしきれません。つまり、とても良いシステムを持つ会社に発注したとしても、自社にとってベストな状態で活用できるかは別問題だったりするんです。しかし私たちの場合は、カタログや製品理解に長(た)けたDCDと、システムを開発しているグループメンバーがタッグを組んで提案します。DNP本社やグループ会社と連携しながら、綿密なコミュニケーションを取って完遂できる点は、DCDの強みだと思います。

4.【結果】ただ閲覧できるだけじゃない。機能拡充の可能性を秘めたカタログが完成。

— プロジェクト期間を振り返っての感想をお聞かせください。

室谷:納品が完了したのは2023年の春。コンペ受注からは、2年弱の月日が経っていました。しかし実際に最終的なオーダーが固まってからの期間は、約8カ月。タイトなスケジュールに悩むこともありましたが、カタログ制作の実績があったからこそやりきれたのだと思います。また、紙をやめてWebカタログ一本にしたという事実は、クライアントだけでなくその周辺企業にもインパクトを与えることになったのではないでしょうか。

— 改めて感じる「紙ではなくWebだからこそできることや魅力」を教えてください。

室谷:ここ最近、Webでの実装が増えてきているもので言えば、「AR機能の搭載」ですね。動画を含めたリッチコンテンツの充実は、まさにWebだからできること。また「更新性の高さ」も魅力のひとつです。紙カタログを年1回発行している企業に共通して言えることですが、新製品をリリースしてもすぐには反映できません。しかし、Webであればリアルタイムで載せられ、検索機能も充実しています。将来的には、画像検索機能を搭載し「検索性のリッチ化」も実現できたらいいなと製品カタログ制作ディレクターとしての新たな想いが。常に進化し続けられる点がWebの良さと言えるのかもしれません。

5.【展望】カタログは、まだまだビジネスを発展させる力を持っている。

— カタログ制作の担当ディレクターとして見据えている未来について教えてください。

室谷:「データ分析を踏まえた改善」ができるところもWebカタログならではのメリットなので、取り組んでいきたいと思います。またインターネット上で閲覧できるようにしたことで、一気に世界中の方の目に触れられるようになりました。グローバル展開するBtoB企業も増えている中で、今後はさらに、多言語翻訳や自動翻訳といった機能も拡充し、商圏をも変えていく。そんな希望も持っています。

高橋:とは言いつつ、まだまだ紙のカタログが営業や販促のツールとして十分活躍する力を持っているのも事実。用途や製品特性などによっても状況は変わってくるので、すべてをデジタルにするのが正解というわけでもないかも……という考えもあります。ベストなかたちを求めて、カタログというものが進化している最中なのかもしれません。

ー 最後に、カタログ制作のプロとしてお伝えしたいことがあれば、ぜひお聞かせください。

室谷:紙でもWebでも、結局そこに載せるものは製品情報コンテンツ。これをわかりやすくアウトプットできる技術とスペシャリストが集まっているのが、DCDの強さです。単にデジタル化するのではなく、その先の営業改革や製品情報管理の構造化など、根本的なところから向き合ってかたちに落とし込んでいく。そんな挑戦に、企業の皆さまと一緒に向き合っていきたいですね。紙にしようか、Webにしようか、そもそもカタログが自社に適しているだろうか……そんな悩みの段階からでもまずはご相談ください。この道のプロとして、全力で伴走し提案してまいります。

※2024年2月時点の情報です。

カタログのデジタル化ソリューションの情報は、以下のWebページでも公開していますので、ぜひご覧ください。