EC時代の勝者の条件 ― 使いやすい「商品情報DB」でビジネスにさらなる推進力を

株式会社DNPコミュニケーションデザイン
コンテンツDX本部
河野 孝幸/Takayuki Kouno
ECサイトでユーザーが意思決定するために必要な商品情報。商品のサイズや説明テキスト、写真などを活用できる状態にする「ささげ業務(※)」は、近年のECビジネスの急成長に伴い、メーカーや流通・小売りなどでの新たな課題となっています。大量の商品撮影・データ処理に追われ、ECサイトごとの規格に沿った画像や情報が素早く準備できない…といったケースも少なくありません。
この状況を打開する手段として、ささげ業務における商品情報の“データベース化”に注目が集まっています。本記事では、DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD) コンテンツDX本部の河野孝幸が、商品情報のデータベース化がもたらす具体的なメリットなどについて解説します。
- 注釈ささげ業務の「ささげ」とは、ECサイトなどで商品情報を伝えるための「撮影(さつえい)」「採寸(さいすん)」「原稿(げんこう)」の頭文字をつなげた造語です。
1. クライアントごとに事務局を立て、ディレクターがデータ収集から手厚くサポート
ささげ業務の中で、DCDでは日々どのようなことを担当されているのでしょうか?
主な業務は、クライアントやサプライヤーから画像・原稿などのデータを収集し、整理することです。PIM(商品情報管理)やDAM(デジタルアセット管理)などのシステムにデータを入力していく作業が中心となります。

基本的には、クライアントごとに事務局を立て、そこにディレクターが1人、登録業務を担うエンジニア2〜3人が入って対応に当たります。必要なスキルに応じて事務局メンバーは構成されますが、過去に依頼を受けたクライアントからは「ディレクターは、〇〇さんにぜひお願いしたい」とご指名をいただくこともあります。そのため長期にわたって同じクライアントを担当するディレクターも多いです。
ディレクターとエンジニアは、それぞれどのような役割を担っているのですか?
ディレクターは事務局のフロントに立って、クライアントの要望を聞きながら、全体の工程の設計を担います。私たちのチームでは「データベース化に必要なデータを全部用意してください」とクライアントに投げるのではなく、そのデータ収集の段階からディレクターがサポートしていきます。

エンジニアは、ディレクターが集めてきたデータを適切な形式に整え、データベースに格納します。
入力していくPIMやDAMについては、DNPが提供している「Pro-V」や「Contentserv」(※)をご利用いただいていると、より効率的な運用が実現できますが、クライアントがすでに別の商品情報管理システムを使用していたとしても問題なく対応できます。
- 注釈「Pro-V」や「Contentserv」について、詳しくはこちらをご覧ください。
2. 手間のかかる作業を自動化、オーダーメードで快適なデータ処理環境を構築
ささげ業務のデータベース化を進めることで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
大きく2つのポイントがあります。1つ目は、商品情報の一元管理における効率化です。とりわけ膨大な品数を取り扱うメーカーや流通・小売りなどでは、大量の商品情報が社内外に散らばっていて、必要な時にすぐ見つけられない…という状況に陥りがちです。

一元管理ができていないことは、クライアントの担当者の負荷が増えるだけではなく、最新のデータをスピーディーに展開できないこととなり、機会ロスにもつながります。たとえば、商品が市場で話題になったタイミングで広告を出したいと思っても、出稿するために必要なデータがあちこちに、しかも「ワード」や「エクセル」、「jpeg画像」などバラバラな形式で保管されていたら…それらを探しフォーマットを整えているうちに、最適な機会を逃してしまうかもしれません。
一元管理を前提としたデータベースにしていくことで、この負荷を大きく削減でき、いち早く最新のデータをECシステムや、Webサイトなどにも展開することが可能です。また、欲しいデータをすぐに出力できるので、例に出したような機会ロスも防げます。
2つ目は、データの二次利用が容易になることです。「カタログ用に作成した画像データをWebサイトでも使いたいけれど、フォーマットの変換に手間がかかる」といったケースは、よくあると思います。単純作業ではあるものの、それが何万件、何十万件ともなれば、膨大な手間になってしまいますよね。こういった課題も、データベース化で解消できます。
データベース化を進めていく上で、企業にとってどのような課題があるのでしょうか?また、DCDはどのような対応をしていますか?
ハードルになりやすいのは、やはりデータ収集の作業でしょうか。これが意外と厄介で、必要なデータがさまざまな場所に散在していることがほとんどです。例えば、大手メーカーともなると、300〜400社といった多くのサプライヤーから情報を集めなければいけない…なんてケースも少なくありません。
こうした状況に対応するために、ディレクターが収集の旗振り役になります。「何が必要で、どこに働きかけるべきか、どんな形式で受け取るか」といった要件を整理し、クライアントに代わって各所に働きかけをしていきます。
また、集まったデータの形式がバラバラで扱いづらかったりすることも、業務の効率化が進まない原因になりがちです。必要な原稿データが、ある部署ではエクセル、またある部署ではワード、PDFなどさまざまな形式で保存されているため、それをシステムに手入力で何万個とコピペして打ち込んでいくとなると、途方に暮れてしまいますよね。サプライヤーが指定した形式でデータを送ってくれないことも多々あります。
このような課題に対しても、私たちのチームではエンジニアがこまめに対応します。データ加工の一括処理を実行するシステムなど、その場その場で必要な開発をスクラッチで行い、効率のよいデータ処理が行える環境をオーダーメードで構築していきます。
あとは、システム導入後にも落とし穴があります。「データベース化を行ったけれど、うまく活用できていない」といったご相談をいただくことも多いです。ささげ業務のシステムはさまざまな部署の方々が触るものなので、導入して終わりではなく、誰かがリードして運用していく必要がある。そうしたところも、私たちのチームはディレクターが介入して、社内で情報の収集・更新が機能するところまでサポートしています。
ささげ業務からPIM/DAM登録まで行うDCDの強み

【実施内容】
■画像・・・多岐にわたる「使われる用途」にあわせた準備
・解像度やサイズなどバッチ処理&リネームなどの画像加工処理を自動で実施。
■テキスト情報・・・PIM/DAMに登録するための加工処理
[マスタ情報の加工処理]
・PIMの仕様にあわせた加工、DAMに必要な情報のみ抽出・加工を行う。
[検索機能を有効化するための準備]
・PIMは商品コードと画像のファイル名を紐づける
・DAMは画像検索する際のタグ情報(検索ワード)を設定
3. 大量なデータ処理、だからこそ自動化による効率の良さを実感
ささげ業務のデータベース化において、DCDだからこそ発揮できる強みとは?
私たちは大日本印刷株式会社のグループ会社として、これまで大量のカタログを制作してきました。これらの現場で、アナログ・デジタルのデータ変換や転用などを数多くこなしてきたノウハウがあるので、データの二次利用がしやすいシステム構築については、他社よりもスピーディーかつ的確に対応できると自負しています。
たとえば、紙媒体用の画像データをデジタルに二次利用する場合、出力がCMYKとRGBでは違いがあるため、色味の調整が不可欠です。ブランドとしてのカラーイメージを大切にする企業は、ここにかなりの時間を費やしていると思います。加えて、使用されるサイズ感に合わせてトリミングなども必要になってきます。
こうした二次利用にまつわる処理も、私たちのチームではエンジニアがしっかりと対応していきます。ある案件では、ブランドに合った色調調整のための独自のカラーテーブルを作成し、ボタンひとつで複雑な処理を実行できるようにしました。自動化しても高い品質を担保できるのは、さまざまな媒体のクリエイティブに携わってきた知見があるからこそだと感じています。

データ入力を自動化する良さは、どういったケースだとより感じますか?
さまざまなケースはありますが、手作業で1件ずつ登録しているなど、自動化が進んでいない環境であったり、作業内容が1万件を超えるなど膨大であるほど、効率の良さを実感できると思います。
クライアントを悩ませる商品データ管理 3選
1:画像仕様に合わせた変換・加工
2:商品情報(スペック情報)の収集
3:画像と商品情報の紐付け
4. 効率化も、品質向上も。データベース化がささげ業務にもたらす大きな恩恵
これからのささげ業務において、改善の余地が大きいと思われているポイントは?
最近では、製品開発とカタログ制作のプロセスに着目した新たなアプローチを模索しています。
大半のメーカーは、カタログの発行に合わせて製品開発をしているため、カタログが最新の情報源となっているケースも少なくありません。そこで、カタログ制作の初期段階から私たちがサポートに入って、データベース化を前提とした制作・撮影フローを構築しつつ、そこからECサイトなど他媒体へ展開するという方法を提案しています。
これができれば、紙媒体からWebへと、段階を踏むことなく、同時進行で媒体ごとの商品情報を準備できるので、新しいコンテンツを各媒体で同時に発信していくことがしやすくなります。
ささげ業務には、今後どのような将来性がありますか?
とりわけ、AI技術との連携に大きな可能性を感じています。AIを活用することでさらにデータ整理の効率化が進み、処理時間の大幅な短縮が期待できます。
さらに商品撮影や原稿作成などクリエイティブの現場におけるAIの活用という点で付け加えると、モデルを起用した商品紹介画像の制作において、DCDでは現在、 企業ブランドに合わせたオリジナルのモデルの顔をAI技術で生成し、服を着ることに重点を置いたモデルや服を着たマネキンの画像に合成し「AIモデル」として活用するサービスを展開しています。
撮影の効率化に貢献するだけでなく、企業ブランドに合わせたオリジナルモデルを作成できることから、高品質なクリエイティブを生み出していくためのツールとして注目を集めています。これらと連携していくことで、企業のECにまつわる負担は今よりももっと軽減できるようになるはずです。
≫≫≫ デジタル時代の加速で、商品撮影のスピード×コスト×品質が課題に! 大量撮影と画像技術(画像修正・CG)で支える“ささげメソッド”
デジタル化が加速するこの世界では、今後も大量のコンテンツの制作が求められる状況が続くでしょう。それに伴って、ささげ業務の重要性、負担も増し続けると思います。「運用が回らなくなる前に効率化したい、でもどこから手をつけるべきかわからない…」といった悩みを抱えていらっしゃる方は、ぜひ私たちにご相談ください。
- 注釈2025年2月時点の情報です。