デジタルマーケティングの成果を向上させるUI/UX改善。ユーザーの体験価値を最大化する具体事例とは

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株式会社DNPコミュニケーションデザイン
第3CXデザイン本部
丸山 真実/Manami Maruyama

自社のWebサイトやアプリにおいて「アクティブユーザーが思ったより増えない」「離脱率が高い」「全体の構造がつぎはぎで操作性がよくない」といった課題に悩まされてはいませんか?それらの解決策を考える上で大いに役に立つのが「UI(User Interface)/UX(User eXperience)」の概念です。DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)では、独自の「UXリサーチ」メニューを武器に、効果的なUI/UXデザイン設計に真正面から取り組んでいます。本記事では第3CXデザイン本部の丸山真実が、具体的な事例を紹介しつつ、UI/UXデザインの本質や、現場で求められる視点・工夫について解説します。

1. UI/UX、その根底にある「人間中心設計」の意味とは?

UI/UXとは、どのような概念なのでしょうか?

まずUXとは、「ユーザー体験」を意味する言葉です。ユーザーが製品やサービスを含めたシステムと関わることで起こる“変化”のことを指します。一方で、UIとは「ユーザーとシステムをつなぐ接点」を意味する言葉で、UXに内包される概念です。

あるシステムを使用する際に、ユーザーの目に触れるものはすべてUIに該当するので、コンピューターやスマホの画面だけでなく、マウスやキーボード、Webページやアプリなども、そのシステムのUIだと言えます。たとえばデジタル系サービスにとって、ユーザーとの接点となるWebページやアプリはUIに当たり、その操作性をよくすることでUXの向上が見込まれます。

UI/UXの位置づけ

こうしたUXとUIの本質を理解する上で重要なのが人間中心設計(Human Centered Design:HCD)という概念で、UI/UXのどだいとなる思想でもあります。

人間中心設計は学術的に明確な定義がありますが、簡単にまとめると「製品やサービスを作り手側の都合ではなく、使う側であるユーザーの要求や欲求に合わせてつくりましょう」という考え方です。人間中心設計を実践するためのプロセスは国際規格化されていて、「調査」「分析」「設計」「評価」という4つの基本プロセスから成るサイクルを繰り返すことが重要だとされています。

UI/UXの土台となる人間中心設計を実践するための4つの基本プロセス

2. 専門家が監修、かゆいところまで手が届くDCDの「UXリサーチ」

DCDにはUI/UXにまつわる案件で、どのようなソリューションを提供できるのでしょうか?

人間中心設計の基本プロセスである「調査・分析・設計・評価」を丁寧に行っていくためのメニューを多数取り扱っています。実際のプランニングでは、クライアントのニーズや予算に応じて柔軟にカスタマイズが可能なので、「既存のデザインに対してユーザビリティテストだけ行いたい」といった対応もできます。

また、さらに質の高いUI/UXデザインを実現するためには、ユーザー視点での調査・評価を行う「UXリサーチ」が不可欠です。DCDではUXリサーチにおいて、「ユーザーサイド/専門家サイド」の両側面で、さまざまなリサーチメニューを用意しています。クライアントの課題感に合わせて、定量・定性の調査を組み合わせながら生活者の実態を把握することで、より効果的なデザインの提案へとつなげていきます。

ユーザーサイドのリサーチでは「ユーザーインタビュー」「ユーザビリティテスト」「ユーザー行動分析」など、定性・定量の両側面からアプローチできます。クライアントのニーズに合わせてこれらの多角的な調査を組み合わせていくことで、ユーザーの要求・要望、現状のUI/UXにおける課題を的確に捉え、エビデンスにもとづいた改善策を提案・実行していくことができます。

「UXリサーチ」メニューについて

クライアントからはどのようなニーズで相談されることが多いのですか?

よく相談されるのは「基幹連携した業務システムを使いやすくしたい」「Web会員サイトのアクティブユーザーを増やしたい」「Webサイトがツギハギになっていて、仕組みを見直したい」といった内容です。それぞれ異なる課題感ではありますが、UI/UXデザインの見直しによって大きく改善が見込める領域です。

3. UI/UXの改善でWebやアプリの操作性が向上、アクティブユーザー増加にも寄与

3つのよくあるニーズについて、これまでDCDではどのようなソリューションを提供してきたのですか?

それぞれのケースにおいて実際に私たちが対応した事例を、「課題・背景」「解決策」「効果」の3項目に分けてご紹介しますね。

①金融系アプリのデザインリニューアル「基幹連携したアプリを使いやすくしたい」
 <解決策> UIリサーチによる改善で操作に迷わない導線設計を実現

「課題・背景」
リニューアルをする金融系アプリは、認証や申込みなどの基幹機能を利用する際、複数の手続きが必要となるため、手順をよりわかりやすく単純化する必要がありました。しかし、基幹機能は他のサービスと連携しているため、アプリに合わせてカスタマイズすることができません。基幹機能の挙動を理解し、全体の業務フローを考慮した上で、バランスの取れた改善策を検討する必要がありました。

「解決策」
UXリサーチを通じて、ユーザーがシステムの情報構造をどのように理解しているかをマッピングし、仮説を立てました。この仮説にもとづいて、アプリのTOP画面などに導線設計を反映させることで、ユーザーの理解に合った使いやすいUIを実現しました。

「効果」
ユーザーが迷わずスムーズにアプリを操作できるようになりました。基幹機能のカスタマイズができない制限がある中でも、UIデザインの工夫によってユーザーの理解をサポートすることができました。

アプリTOP画面の情報構造を整理

②健康管理アプリの改修「Web会員サイトのアクティブユーザーを増やしたい」
 <解決策> ユーザーシナリオにもとづくコミュニケーションの最適化で継続率向上

「課題・背景」
毎日の歩数に応じてインセンティブが得られる仕組みの健康管理アプリで、アクティブユーザーを増やしたいという相談を受けました。アプリ利用による収益とユーザーの健康促進のためにも「使い続けてもらう」ことが課題でした。

「解決策」
コアターゲットユーザーを理解するために、UXリサーチに加えてDNPの行動デザインにもとづくワークショップを実施しました。そして、コアターゲットに合わせてユーザーシナリオ(カスタマージャーニー)を作成し、1日・1週間・1カ月の目標指標を設定することを提案しました。 

「効果」
ユーザーシナリオにもとづいて複数のタイムスパンで目標を設定することで、「達成状況を確認したくなる」や「あと少し歩こう」といったモチベーションが高まり、日々の利用だけでなく、1週間・1カ月の利用率も維持されています。その結果、ヘルスケアアプリとして長期間にわたって高い継続率を実現しました。

健康管理アプリの利用イメージ

③Webサイトのリニューアル「Webサイトがツギハギのため、仕組みを見直したい」
 <解決策> 定量・定性分析による多角的な課題解決で統一感のあるサイトに

「課題・背景」
既存のWebサイトが必要なときにページやコンテンツを追加していたため、サイト全体のまとまりがなく、構造がわかりにくくなっていました。

「解決策」
ユーザーにとって使いやすいサイトをめざし、既存サイトの機能やコンテンツの導線を把握し、ヒューリスティック評価(※1)を通じてUIデザインの課題を特定しました。また、アクセスログを解析してユーザーを具体化し、セグメントを整理・分析することでコアターゲットを決定しました。これらの情報をもとに、「もっと便利になったら、ユーザーはこんなふうに使えるはず!」という理想の使い方を描いたTo beユーザーシナリオを設計し、最適なコンテンツと画面設計を提案しました。

  • 注釈1:ヒューリスティック評価:デザインの専門家がこれまでの経験や知識をもとに、アプリやウェブサイトなどの使いやすさをチェックする方法

「効果」
ユーザーシナリオをもとに機能やコンテンツを再配置し、UIデザインを見直すことで、コンセプトに沿った統一感のあるサイトを再構築しました。また、ユーザーシナリオで仮説を組み立てることで、リリース後に仮説検証が可能となり、根拠に基づいた改善サイクルを実現しています。

4. Web上だけではない、リアルの場にも効いてくるUI/UXデザインの思考

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UI/UXのソリューションは、今後どのような領域に広がっていくと思いますか?

バーチャルだけでなく、リアルなタッチポイントの改善も含めた横断的なUI/UXの設計ができれば、ユーザーの体験価値はさらに大きく向上していくはずです。そうした施策へのニーズは、これからどんどん増えてくると思っています。展示会場や店舗のサイネージなど画面を超えたリアルな場やプロダクトにも、UI/UXデザインの思考を生かしていきたいです。

個人的には、これからXR(※2)系などのサービスが盛り上がってくると思っています。XR内の体験は没入感が求められ、UIがそのままUXに直結するような空間になっています。そこではUI/UXデザインの思考が大いに生きるのではないかと感じています。

UI/UXデザインにおいて、DCDだからこそ出せる強みとは、どういったところにあるのでしょうか?

各部門のエキスパートたちが集まって対応する総合力にあると思っています。私たちの部署はUI/UXデザインのコアチームとして、UXリサーチからUIの設計までを行います。その後で実際にアプリやWebに実装するためのビジュアルデザインについては、DCDのデザイン専門チームと連動して対応していくので、最終的なアウトプットも高い水準で提供できます。

加えて、DCD社内にはアクセシビリティに強い専門家、ユニバーサルデザインに長けた(たけた)専門家など、さまざまな得意分野を持ったプロフェッショナルが在籍しています(※3)。クライアントのニーズや求めている品質に応じて、最適な専門家を集めながらチームを組んで対応に当たれるのが、私たちの大きな強みです。

また、デザイン面だけではなく、エンジニアリングの専門家がいることも大きな特徴です。
コンサルティングから調査、デザイン、開発、実装、アフターケアまでワンストップで対応が可能だからこそ、より本質的な課題解決が提供できると自負しています。

DCDは紙やデジタル、リアルな場づくりも含めてあらゆる方面のクリエイティブの知見を持った専門家が多数在籍しています。だからこそ、横断的な体験づくりも手がけられるので、そういった案件も今後増やしていきたいと思っています。ぜひご相談ください。

  • 注釈2025年7月時点の情報です。

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