映像で伝える「油の壮大な旅」 ― 日清オイリオグループ様「日清オイリオ あぶらミュージアム」で実現した、感動設計にもとづく映像制作と体験型コンテンツ

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▼語り手プロフィール
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
CBデザイン本部
藤縄 鑑人/Kaneto Fujinawa

2025年、日清オイリオグループ株式会社(以下、日清オイリオグループ)様がリニューアルオープンした「日清オイリオ あぶらミュージアム」は、横浜磯子事業場の工場見学をする来場者向けの展示施設です。DCDはこの施設のデジタルコンテンツと施設内で上映されている工場見学者向け動画「Road to 油/You」を手掛け、映文連アワード2025にて、特別表彰「製品・技術解説賞」を受賞しました。

「Road to 油/You」は、毎日の食事に欠かせない油が原料からどのように製造され、生活者である「You」のもとへ、どのように届けられるのかを描いた映像で、工場のスケール感や製造工程の迫力、品質へのこだわりが高く評価されました。本映像のプロデュースと施設内のデジタルコンテンツの企画・制作を担当した株式会社DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)の藤縄鑑人に、映像制作のこだわりと体験設計の工夫について聞きました。

1. ギャラリーの展示内容を刷新、「ワクワク」と「共感」を生み出すミュージアムへ

はじめに、本プロジェクトの背景について教えてください。日清オイリオグループ様からはどのような依頼があったのでしょうか?

プロジェクトの発端は、日清オイリオグループ様が横浜磯子事業場に開設していた「日清オイリオ ウェルネスギャラリー(以下、ウェルネスギャラリー)」のリニューアルを計画されたことに始まります。

「日清オイリオ あぶらミュージアム」で上映される「Road to 油/You」の制作背景を語るDCDの藤縄

ウェルネスギャラリーは日清オイリオグループ様の歩みやモノづくりの魅力に触れられる展示が用意されており、小中学生や取引先の方々など、幅広い客層に親しまれていた施設です。日清オイリオグループ様は、このギャラリーの展示を時代の流れに合わせて刷新し、特に若い世代に向けて体験価値を高めるリニューアルをしようと模索していました。

そんな背景から、日清オイリオグループ様は2024年、ウェルネスギャラリーを「日清オイリオ あぶらミュージアム(以下、あぶらミュージアム)」へ全面改修するために、その空間設計を担う事業者を選定。DNPグループが空間設計からコンテンツ制作までをトータルで担当することとなり、私は施設内のデジタルコンテンツの企画・制作担当として参画することになりました。

当初、私に声がかかった段階では、制作物の詳細をこれから一緒に検討していくフェーズでしたが、リニューアルの方向性として、「ワクワク」「共感」といったキーワードが挙げられていました。来場者が体験を通じて企業のブランドメッセージを理解できるよう、遊び心のあるインタラクティブなコンテンツを多数制作しました。

2. ゲーム性の高いインタラクティブなコンテンツから、工場紹介の映像まで

日清オイリオグループ様からのご依頼を受けて、DCDはどのようなコンテンツの制作を担当したのでしょうか。

DCDとして制作を担当したのは、3つのコンテンツです。

1つ目は「バランスミッション」。これは、3つのゲームにチャレンジしながら、摂取カロリーと栄養バランスについての基礎知識を学べるコンテンツです。日清オイリオグループ様は健康増進の啓発に力を入れており、このコンテンツには「健康でいるためには、油も大切な要素だ」ということを知ってほしい、という思いが込められています。ゲーミフィケーション(※)の手法を取り入れつつ、老若男女問わず楽しく学べる内容に仕立てました。

  • 注釈ゲーミフィケーションとは、ゲームではない領域(ビジネス、教育、健康など)のサービスや活動に、ゲーム特有の要素を応用し、利用者のモチベーション向上や能動的な行動促進、継続的な利用や目標達成を促す手法
藤縄が企画した、あぶらミュージアムの常設コンテンツ:バランスミッション

2つ目は、「揚げ物」の調理を疑似体験できるコンテンツ。菜箸を模したタッチペンとタッチパネルを用いており、音は実際の調理音を収録し、映像も本物のような質感の再現にこだわりました。

藤縄が企画した、あぶらミュージアムの常設コンテンツ:揚げ物の調理を疑似体験できるコンテンツ

そして3つ目が、施設内で上映する映像「Road to 油/You」。これは、工場見学者が最初に触れるコンテンツとして制作しました。あぶらミュージアムの来場者は合わせて工場見学もできるのですが、その前に工場の全容と油の製造工程を把握してもらえるような内容になっています。この「Road to 油/You」が、映文連アワード2025で受賞した作品となります。

あぶらミュージアムのシアター用・常設映像「Road to 油/You」

3. 感動を生み出すストーリー設計、油の視点で描く壮大な旅

「Road to 油/You」の企画提案の際に、どのようなポイントを押し出しましたか?

映像の目的は「植物油の製造工程を伝える」というシンプルなものです。そこに加えて私たちが提案したのが、「伝えたい企業理念や製品の価値を、見る人の思考に沿って再構築する」こと。

物語の力を活用してユーザー体験や行動を設計する手法を取り入れつつ、見る人の感情や思考を拡張させながら、自然に「感動」をもたらす設計にすることを強調しました。

人の「感動」には、美しい音楽や映像から感じ取れる感覚的なインスピレーション、発見や気づきといった刺激、共感できる物語性など、いくつかの定型的な要素があります。これらを映像の起承転結やビジュアルに戦略的かつ効果的に落とし込むことを意識して設計しました。

また、ストーリーとしては「植物油の製造工程」をただ淡々と伝えるだけでは、情報の羅列になってしまい、人を惹きつけるものにはならないと思いました。そこで、映像の視点を「油」目線にして、原材料が海を越えて工場に届き、巨大な工場で油になるまでの「壮大な旅」として描くことを提案。油を擬人化して物語の主人公にすえることで、より迫力と没入感のある映像になると考えました。

映像のクオリティについては、どのような提案を?

工場の圧倒的なスケール感を伝えるためにも、「映画のような映像クオリティをめざしたい」と伝えていました。ただ、当初日清オイリオグループ様の社内からは「この映像にそこまでコストをかける必要性があるのか?」という声も上がっていて。

さまざまなレファレンスを見せながら「高品質なものを作ることで、来場者により深い気づきと感動を届けられる」「工場内で働く人たちが、自分たちの職場を自慢したくなるような映像を作ることで、インナーブランディングにも貢献できる」と、数回にわたってプレゼンテーションしました。さまざまな議論を経て、最終的に「10年に一度作るのであれば、長く愛されるしっかりしたものを作ろう」と、納得していただけました。

4. 映画水準の撮影技術と多様な機材が織りなす、圧倒的な臨場感

「Road to 油/You」の制作・撮影において、藤縄さんが特にこだわったシーンについて教えてください。

すべてのシーンにこだわっているのですが、最も力が入ったのはオープニングです。「壮大な旅」の始まりを、臨場感と没入感たっぷりに観客に味わってもらうために、ドローンを用いて海岸から約800mも離れた海上から飛行撮影を行いました。

本件の撮影では、CMや映画を手がけてきた熟練のスタッフを起用しています。ドローンのほかにもさまざまな特殊機材を投入しながら、1シーンに1時間以上かけて丁寧に撮影しました。

細やかなクオリティにこだわる一方で、「植物油の製造工程を伝える」という大目的をおろそかにしないよう、全体を通しての「わかりやすさ」も強く意識しました。製造工程を感覚的に理解してもらうために、随所に図表やグラフィックを挿入しています。この映像を見てから実際に工場見学をすることで、製造に対する理解が相乗的に深まって、あぶらミュージアムの一連の体験価値がさらに向上するようなつくりにしました。

ドローンを用いて海上から撮影したオープニング
グラフィックを用いて説明された製造工程

5. 映文連アワード受賞と従業員の涙 ― 外部評価とインナーブランディングへの貢献

「Road to 油/You」について、日清オイリオグループ様や外部からはどのような評価をいただいていますか?

映文連アワード2025では特別表彰「製品・技術解説賞」を受賞しました。評価のポイントとしては、「油が原料から製造され生活者に届くまでの壮大な旅をストーリーとして描いたこと」「映像機材や技術の高さ」「工場見学者にとって理解・共感を得られる内容であること」の3点が挙げられました。

日清オイリオグループ様からは、「プレゼンテーションでの説明通り、感動的な映像に仕上がっている」という評価をいただいています。広報部長(当時)からは「長年CMや映像を見てきたが、過去に例を見ないほどのクオリティだ」とほめてくださいました。また、初めて社内で試写をした際に、何名かの従業員が涙を流して喜んでくださったのも印象的でした。この制作を通じて私たちを信頼していただき、別件の映像制作の依頼をいただけたことも、すごくうれしく思っています。

今回の制作経験を踏まえて、今後どのような案件に取り組んでいきたいか教えてください。

今回の制作を通じて、企業や商品の価値、未来像を映像・空間・デジタル体験として一貫したストーリーで表現することが、私たちDCDの強みだとあらためて感じました。

映像制作は「とにかくカッコよければいい」「エモーショナルでノリや表現が良ければいい」という感覚的・表面的なアプローチに陥りがちですが、それではクライアントにとって本当に望ましいコンテンツにはなりにくいです。これからも、生活者の感情や行動を論理的に構造化し、その上で「エモーショナルなだけではなく、見る人の感動を呼び起こすストーリーや感動設計」をしていきたいです。

  • 注釈2026年6月時点の情報です。

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