グループを巻き込み、地域をつなぎ、社員が主役になる周年へ ― みずほ信託銀行様100周年プロジェクトの舞台裏

2026年08月18日

語り手の写真
▼語り手プロフィール
みずほ信託銀行株式会社
100周年プロジェクト事務局
覚知 健太郎 様/Kentaro Kakuchi(写真中央)

大日本印刷株式会社
情報イノベーション事業部
乙竹 晃子/Akiko Ototake(写真右)

株式会社DNPコミュニケーションデザイン
CBデザイン本部
榊 拓也/Takuya Sakaki(写真左)

2026年3月3日から5日にかけて、大日本印刷(以下、DNP)の情報イノベーション事業部グループ主催によるプライベート展示会「DNP THE SESSION 2026 SPRING」(※1)が開催されました。本展示会の中で、みずほ信託銀行株式会社(以下、みずほ信託銀行)様による100周年プロジェクトをテーマとしたセミナーも実施され、本記事ではその登壇内容をレポートとして紹介します。

登壇したのは、周年プロジェクト事務局を務めた、みずほ信託銀行の覚知健太郎様、プロジェクトを伴走支援したDNPの乙竹晃子とDNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)の榊拓也との3名です。2年間にわたる周年プロジェクトの狙いや施策内容、そこから得た学びについて実務担当者の視点でご紹介します。

  • 注釈1 情報イノベーション事業部グループ主催によるプライベート展示会「DNP THE SESSION 2026 SPRING」サイトはこちらからご覧ください。

1. 「信じて託される存在」をめざして ― 100周年プロジェクトの背景と推進体制

みずほ信託銀行様の100周年プロジェクトは、「お客さまに“信じて託される”パートナーとなるため、お客さまと社会の『想い』『成長』の実現を支援してきたみずほ信託銀行のコンサルティングにさまざまな角度からフォーカスすると同時に、みずほ信託銀行自体に対する理解を深め、グループ内外からのみずほ信託銀行に対する期待感を高める機会として活用する」という考えのもと、2024年度の社長交代に伴って刷新された事業戦略の浸透の機会として位置づけられました。信託の機能を「知る・考える・つなぐ」という3つの軸で発信することを基本方針とし、2025年5月9日(周年当日)の日本経済新聞への全面広告掲載を皮切りに、各施策が順次展開されました。

周年プロジェクトの起点は2023年度上期、当時の社長の号令から動き出しました。まず社内の中堅メンバー7名でブレストを重ね、実現可能性は度外視してアイデアを広げていきました。2023年度下期に事務局体制を整え、翌2024年度にはみずほグループ全体から「100周年推進メンバー」を公募。手を挙げた有志32名を束ねながら3つのワーキンググループ(以下、WG)を組成し、DCDを含むDNPグループのサポートのもとで具体的な内容の検討が始まりました。

注目すべきは、専任の部署やタスクフォースを設けなかった点です。事務局(経営企画部・コーポレートカルチャー室)と3つのWG「広報WG」「社員参加型WG」「周年ポイントWG」は、いずれも現業と並走する有志の社員で運営されました。

みずほ信託銀行・覚知様
「事務局もWGメンバーも現業を抱えながら動いていたため、『持ちつ持たれつ』という文化が自然に定着しました。周年プロジェクト専属の人員を設けないことで特定の誰かに依存しない体制になったのは、うれしい誤算でした。また、総勢32名という人数は、途中やむを得ず離脱するメンバーがいても問題なく運営が回る適切な厚みでした。DNPグループの皆さんがプロジェクト全体の段取りや各会議体の運営をしっかりサポートしてくれたからこそ、メンバーは通常の実務と周年の活動を無理なく両立できたのだと思います」

100周年プロジェクトについて話す、みずほ信託銀行の覚知健太郎様

周年事業の推進体制を支えたのが、複数の会議体の設計です。各WGのミーティング(毎週〜隔週)、全体ミーティング(約半年に1回)、事務局とDNPグループとの定例(隔週)を組み合わせました。

DNP・乙竹
「全体ミーティングは、バラバラに走りがちな3つのWGの動きを一気に集約し、互いの意識を高め合う重要な場として機能させました。また、さまざまな部署や関連会社からの参加者が集まる中でも滞りなく作業が進むように、データ格納方法を初期に議論して設定するなど、WGごとの作業の重複や抜けが発生しないよう、事務局として進捗管理の徹底を心がけました。」

周年プロジェクトの運営体制について話すDNPの乙竹晃子

2. 「広報・社員参加・周年ポイントの活用」という三軸構造で動いた施策群

ここからは、3つのWGの具体的な取組みをそれぞれご紹介します。

広報WG:社員が選んだ周年ロゴで周年を盛り上げる

広報WGが最初に取り組んだのは、周年ロゴの制作です。みずほ信託銀行様だけでなく、みずほグループ全体に公募をかけて40件を超える素案を集め、最終的には社員投票によって周年ロゴを決定。その後の商標調査、名刺や各種資料への展開ガイドラインの作成も、広報WGが主体となって整備しました。

社員からの公募・投票によって決まった100周年のロゴ

覚知様
「100周年といっても、一人ひとりの社員が『来年が100周年だ』と意識していたわけではありません。そこに必要だったのが、周年ロゴの公募・投票という仕掛けです。これらが周年への関心を高める効果を発揮し、効果的なインナーコミュニケーションにつながっていきました。この公募がきっかけとなって、周年の取組みがみずほ信託銀行以外のグループ各社にまで認知がしっかりと広がっていったなという実感があります」

DCD・榊
「社員の方が作った周年ロゴが名刺や資料に載っていると、見せる相手に『これは社員が作ったんですよ』といった話をするきっかけにもなり、インナー・アウターブランディングの双方に寄与します。本件の公募では、制作や選考のプロセスに関わる人が増えるほど周年ロゴへの愛着が社内に広がっていくという、いい循環が生まれるのを感じました」

周年ロゴの公募・投票によって周年への関心が高まったと話すDCDの榊拓也

周年に関連する施策概要・スケジュール・取組みの結果をリアルタイムで更新する社内向けの特設サイトの制作も、広報WGが担当しました。これらの情報はイントラネットのトップページに置いて「自然に目に触れる」設計にしたことで、「特設サイトを作っても認知されない」という周年事業にありがちな課題もクリアできたといいます。また、同時期に制作した社外向けの特設サイトには社長メッセージや年表、業務紹介、OBインタビューなどを掲載。フロント業務だけでなく、さまざまな業務に関わる担当者の写真と紹介も盛り込みました。

みずほ信託銀行様100周年特設サイト
みずほ信託銀行様100周年特設サイト


「日ごろ、みずほグループ全体での情報発信が主体になる中で、みずほ信託銀行様単独で業務紹介や社員紹介をする機会はなかなかありませんでした。このサイトは新卒採用に向けた訴求コンテンツとしても、また営業以外の部門で働く社員のモチベーション向上としても機能しています。私自身もサイトを作りながら、『信託』が自分の身近にあるという気づきがあり、みずほ信託銀行様との距離が縮まった感覚がありました」

全国の営業拠点では、「地域への恩返し」をコンセプトに各拠点が自主的な企画を実施。子ども食堂への支援、フードバンクへの食材提供、公共施設への車いす寄贈、地元の祭りへの参加など多様な活動が展開されました。ある拠点では近隣の小学校への働きかけが「金融教育」へと発展するなど、自発的な地域連携が生まれたことも大きな成果となりました。

覚知様
「『何をやるかは拠点ごとに考えてください』という形にしたところ、自発的で素晴らしいアイデアが次々と生まれました。グループ会社のメンバーと共同で取り組むなど、グループの一体感醸成にもつながっています。拠点を持つ組織では、地域の人たちが置いてけぼりにならないよう巻き込む企画が非常に有効だと感じました」

社員参加型WG:アイデアが絵になり、写真が動画になる

社員参加型WGは「信託の機能を知ってもらい、考え、つながっていく」機会を設計することを狙った企画づくりを担いました。

そのひとつが「ビジョンマッププロジェクト」です。信託の5つの基本機能(まもる・たばねる・わける・かたがわる・うつす)を用いた「世の中をより良くできる未来の信託サービス」のアイデアを社内で募集したところ、150件のアイデアが集まりました。そこから事務局が11件に候補を絞り込み、それらをDCDがイラスト化した上で、社員投票でグランプリを決めました。そしてイラスト化した11件のアイデアを1枚のビジョンマップにまとめました。

11件の「世の中をよりよくできる未来の信託サービス」(上)をまとめたビジョンマップ(下)

覚知様
「金融機関のように形のないものを提供している我々からすると、アイデアが絵として形になるというのは、とてもうれしいことでしたね。ビジョンマップというアウトプットとして残せたことは大きな意義がありましたし、周年期間を盛り上げるきっかけにもなりました」

もうひとつが「アートチャレンジ」です。社員のご家族の参加も含めて、絵画部門では82点、フォト部門では101点の応募が集まりました。ここから社員投票でグランプリが選ばれ、受賞作「震災を知らない子供達へ」(仙台支店)をはじめ全応募作品をつないだ記念ムービーも制作・公開されています。

さらに、「ウォーキングイベント」は既存の健康管理アプリと連動し、2025年5月と10月の2回実施。春に開催した「チーム対抗チャリティーウォーキング」では社内SNSを用いて、趣味軸など自由なチーム編成を促し、7,284名(1,096チーム)が参加。全員の歩数合計に応じて、公益財団法人みずほ教育福祉財団へ1,043,245円が寄付されました。秋の開催は「 TB全国支店めぐり」として、春と同様に既存の健康管理アプリと連動し、みずほ公式キャラクターの「あおまる」が全国の支店をすごろく形式で巡るコンテンツを展開し、3,214名が参加しました。

「 TB全国支店めぐり」の開催目的について
(「TB全国支店めぐり」のアプリは、株式会社QOLeadにて設計・作成したものです)。

乙竹
「やりたいことはたくさんある中で、スケジュールや予算という現実的な制約が迫ったとき、『やる・やめる』の判断をどうサポートするかが事務局としての重要な課題でした。これといった正解はないのですが、しっかり皆で議論して納得感を持って一つひとつ進めていく、丁寧にコミュニケーションを取り続けることで、本当にチームワークの良いWGに育っていったと思います」

周年ポイントWG:周年ポイントという「横串」が施策全体をつなぐ

周年ポイントWGは、各施策への参加インセンティブとして周年ポイントを付与し、集めた周年ポイントで「あおまる」オリジナルグッズなどと交換できる仕組みを担当しました。

「めざせ信託マスター!」は社外サイトや記念誌を参照しながら信託クイズに答えるコンテンツで、定期的な配信により根強いファンが形成され、最終的にこの企画だけで約1万周年ポイントを発行する人気企画になりました。全国の拠点情報と公式キャラクター「あおまる」を掛け合わせ、閲覧に応じて周年ポイントを付与することで、周年施策への継続的な参加と信託銀行への理解を促すために設計されたコンテンツです。

2025年5月のサイト公開後、合計1.5万超の周年ポイントを発行し、グループ内1,500名以上が利用。10月のウォーキングイベントや12月のアートチャレンジの時期に周年ポイント獲得数が増加するなど、各WGとの連携効果が数字にも表れました。

各施策への参加インセンティブとして採用した「周年ポイント」


「周年施策が多岐にわたりバラバラになりがちななかで、周年ポイントという横串の施策が全体のまとまりを作る役割を担えました。みずほ信託銀行様以外のグループ各社からのアクセスも多く、信託業務の認知向上にも貢献できました。周年サイトへの継続的な流入という点でも、大きな役割を果たせたと思っています」

3. 2年間で見えた5つの学び ― 「外を動かすことができた」という予想外の成果

セミナーの締めくくりとして、覚知様は2年間のプロジェクトから得た学びや成果を5つにまとめました。

①専任での担当組織を作らなかったからこそ主体性が生まれた
有志で動いたことで「持ちつ持たれつ」の文化が根付いた。DCDを含むDNPグループが実務面を支えたことで推進メンバーが企画に集中できた。

②推進力のあるリーダーの配置が鍵
 実行力・巻き込み力のあるメンバーを要所に配置することで意思決定と実行のスピードを担保した。

③認知拡大で最後に効いたのは「口コミ」
全社メールやサイネージなどあらゆる導線を活用しつつも、WGメンバーや拠点リーダーによる草の根の口コミが最も効果的だった。

④「拠点企画」が"自分事化"と"一体感"を生んだ
自発的でポジティブな活動が各地で広がった。一人ひとりが納得感を持って前向きに取り組むうえで、拠点企画は特に有効だった。

⑤想定以上に"信託銀行の外"を動かすことができた
ビジョンマッププロジェクトでは、グランプリに選ばれたアイデアがみずほ銀行の社員によるものだったほか、150件応募のうち約4割がみずほ信託銀行以外のグループ社員から寄せられました。この結果から見ても、今回の周年施策が、みずほグループ全体を巻き込む活動として広がっていったことがうかがえる。

セミナーでの発表の様子

覚知様
「当初は信託銀行の社内だけで進めるかという議論もありましたが、グループ全体のイベントとして展開したのが正解でした。『信託は難しくてよくわからなかったが、楽しみながら理解できた』という声が多くありました。信託への理解の入口を作れたことは、想定以上の大きな成果だったと思っています」


「さまざまなメンバーが集まったことで、みずほ信託銀行様らしい周年になったと感じています。周年プロジェクトでは『その会社らしさ』を出すことがポイントではあるものの、なかなか難しいのですが、みんなが考えることによって自然とそれが生まれてきたのが、一番素晴らしかったと思います」

企業の周年プロジェクトは、歴史への感謝を起点に、あらゆるステークホルダーとの関係を強化し、組織の体質そのものを変えていく力を持ちます。みずほ信託銀行様の100周年プロジェクトは、社員・グループ・地域が一体となって作り上げたモノとして、次の100年へとつながっています。

DNPグループでは今回のように、周年プロジェクトにおいて、企画立案から、体制・会議運営などの進行の設計、各施策の制作支援など、プロジェクト全体を推進・伴走支援しています。周年を単なる記念行事に終わらせず、企業と組織の変革につなげたいとお考えの方は、ぜひご相談ください。

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