社内報制作で最初に考えたいこと。「思いが伝わる社内報」の企画術

2026年09月15日

新人広報担当者向け! 思いが伝わる社内報を作るコツ

「社内報の担当になったけれど、何から手をつければいいのかわからない」「企画案をなかなか通せない」「ネタ集めに追われてしまい、そもそも何のために発行しているのか見失ってしまう」など ─ 社内報制作で直面しやすいこうした悩みの多くは、発行の「方針設計」が整理されていないことに起因しているのかもしれません。本記事では、読まれる社内報・効果を出す社内報を作るために押さえておきたい、企画の考え方と、実務に有用なワークシートをご紹介します。

1. 社内報制作の全体像を整理しよう

社内報の制作に取りかかる際、担当者がどのような業務を行うのかを整理しておくことが大切です。

【1】企画・方針設計

社内報全体の骨格を決めることで、編集方針の設計・予算管理・キャスティング・企画プランニングなどが含まれます。

【2】ディレクション・進行管理

方向性の指示・トーン&マナーの設定・切り口設定・スケジュールの作成・管理など、制作を実際に動かしていきます。

【3】編集・制作

編集・コピーライティング・取材・撮影・校正校閲・デザインレイアウトなど、誌面を形にする実制作の業務です。

【4】社内調整・情報収集

上記すべてを支える、社内各部門との調整や連携、情報収集を行う業務です。

外部に制作を委託する場合は、どの業務領域を任せてどの部分を自分たちが担うのか、相手に期待する役割を明確に提示することで制作がスムーズに進みます。とくに「【1】企画・方針設計」は外部任せにせず社内で主体的に考えておくことが、社内報の効果を高めるうえで重要です。

2. 方針の5要素+コンセプトワードで、めざす姿を明確にする

めざすべき社内報の姿を明確にするために、下記の「何のために」「誰に」「何を」「どこで」「いつ・どのくらい」の5つの要素と「コンセプトワード」を整理しましょう。

「何のために」 ─ 目的を定める

社内報を発行する目的を言語化するところから始めましょう。目的があいまいなままでは、どんな企画を立てても軸がブレてしまいます。近年、社内報の発行目的としてよく挙げられるキーワード「従業員エンゲージメントの向上」を例に、社内報の発行目的をどう具体的に考えるかを紹介します。

従業員エンゲージメントは、「環境:職場環境や待遇」・「関係:会社との関係性」・「職務:仕事自体への満足度・達成感」という3つの要素で構成されています。そして、従業員エンゲージメントの向上を促すための要素として以下の6点が考えられます。自社の状況を把握したうえで、どの要素を社内報で意識していくのかを考えます。

<従業員エンゲージメント向上を促す要素>

①トップの思い・ビジョン・企業理念の浸透
②事業内容や取組みへの理解促進
③社員同士のコミュニケーション醸成
④帰属意識の向上
⑤一体感の醸成
⑥モチベーション向上

さらには伝える内容について「どの浸透段階」をめざすかを考えます。浸透には「認知・理解」→「共感」→「実践行動」という段階があります。どの段階をめざすのかを明確にすることで、社内報で何を浸透させ、従業員にどのような行動変容を期待するのかが定まります。

社内報の発行目的をより具体的にする方法例

「誰に」 ─ ターゲットを設定する

社内報である以上、ターゲットは従業員全体ですが、実際には優先的に届けたい層を設定することが重要です。しかし、興味・関心、価値観、職種、情報量は従業員によってさまざま。全員に同じように伝えることはそもそも難しいと認識しておく必要があります。

有効なのは、読者イメージとして「いくつかのペルソナ」を設定することです。「号ごと」や「コーナー/テーマごと」に、実在の従業員をモデルにしたペルソナをイメージしながら企画を立てると、コンテンツの内容や表現が具体化されやすくなります。

例えば「会社への理解がまだ薄い若手従業員にも読んでもらいたい」のであれば、冊子を開いてもらう仕掛けやかみ砕いた表現が必要になります。「組織を引っ張るエバンジェリストに活かしてもらいたい」のであれば、説明の深度を高めたり行動に結びつく仕掛けを盛り込んだりすることが求められます。

ターゲットを明確にするとコンテンツのイメージも具体化される

「何を」 ─ コンテンツの方向性を考える

発行目的とターゲットが定まったら、「何を伝えるか」の方向性も整理しておきましょう。コンテンツの設計に落とし込む際の基本的な考え方として、社内報のコンテンツは「特集」と「連載」の2つに整理すると考えやすくなります。特集は毎回テーマを変えて季節性や話題性を持たせて深く伝えるもの、連載は固定枠として毎号コンスタントに届けたい情報をフォーマット化して展開するものです。

コンテンツを具体化する際のポイントは、「そのテーマをどんな人に読んでもらい、読んでどうなってほしいのか」をイメージすること。ターゲット像と読後の効果を起点に考えることで、伝えるべき内容と切り口が定まってきます。全体を通じて単調にならないよう、切り口の変化と情報の質の強弱を意識しながらコンテンツを設計しましょう。

「どこで」「いつ・どのくらい」 ─ 媒体と頻度を考える

「どこで」「いつ・どのくらい」の問いは、「どんな媒体で?」「どんなタイミング・どのくらいの頻度で?」に置き換えて考えましょう。

近年は、社内コミュニケーションの変化・働き方の多様化・ペーパーレス化やDX化の流れを背景に、Web社内報への注目が高まっています。紙媒体とWebにはそれぞれ以下のような特性の違いがあります。ここでは、紙媒体の社内報を「冊子」、デジタルで配信する社内報を「Web社内報」として整理します。

冊子とWeb社内報の特性

Web社内報の課題として「デジタルに切り替えると読まれにくくなるのでは」という懸念はよく聞かれます。冊子のように「配布され、自然と手元に届く」プッシュ性がなくなる分、Web社内報こそ読ませる工夫がより重要です。具体的には以下のようなヒントがあります。

<Web社内報を読んでもらうためのヒント>

・情報に気付かせる仕組み
イントラネットに更新バナーを掲出する、社内メールマガジンで呼び込む、デジタルサイネージで告知する
・Web社内報ならではのコミュニティづくり
部活・趣味・テーマ別での発信枠を設ける
・参加型の設計
「いいね!」ボタンの設置、クイックアンケート企画、従業員による記事投稿の仕掛けをつくる
・Web社内報ならではのコンテンツ投入
動画・音声、インスタグラム風の画像メインの情報伝達を取り入れる

また、冊子とWeb社内報を組み合わせた発行もおすすめです。媒体ごとの特性や弱みを補完し合うようにコンテンツを設計することで、より効果的なコミュニケーションが実現します。

例えば、冊子は3カ月に1回のプッシュ媒体として機能させつつ、Web社内報では誘導コンテンツ(詳細記事・動画・裏話など)を随時掲載して循環を生む設計が有効です。Web社内報で集まった読者の反応を冊子にフィードバックするという情報の循環も、従業員エンゲージメントの向上に寄与します。

冊子とWeb社内報の特性を生かしたコンテンツ設計の例

コンセプトワードを設定する

最後に、その媒体がめざす姿を一言で表す「コンセプトワード」を設定しておきましょう。例えば「未来の兆しを発信し、従業員をつなぐ冊子」などがそれにあたります。コンセプトワードは制作チームの意識をそろえるための羅針盤です。企画を詰める際に迷ったとき、コンセプトに立ち戻ることで方向性がブレにくくなります。

3. 制作負荷も踏まえ、方針をまとめてみよう

理想の方針が描けても、実際に社内で実施できるかどうかは別の問題です。制作負荷と制作体制の検討も、方針設計の重要な一部です。自社の実態を踏まえながら、無理なく継続できるコミュニケーション設計を心がけてください。参考までに、ここまで整理してきた「何のために、誰に、何を、どこで、いつ・どのくらい届けるか」の5要素と「コンセプトワード」を一覧でまとめるワークシートを下記にご用意しました。

新人広報担当者向けワークシート

社内報のめざす方向を明確にするためのワークシート

社内報の企画に欠かせない「目的」「ターゲット」「媒体」「頻度」「コンテンツ方針」を体系的に整理できる一枚の設計シートです。
項目に沿って記入するだけで、社内報の方向性やコンセプトが明確になります。新人広報担当者はもちろん、既存の社内報を見直したいご担当者にもおすすめです。企画づくりの第一歩として、ぜひご活用ください。
※PDFが開きます。

社内報の制作は、企画の軸となる方針を言語化するところからスタートします。核となる要素を丁寧に整理して文書化・共有することで、「社内報を作る」こと自体が目的となることを防ぎ、効果的なコミュニケーションツールとして機能させることができます。まずはここで紹介したワークシートに書き込んでみるところから、始めてみてください。

人物の画像

株式会社DNPコミュニケーションデザイン CBデザイン本部

桜田 晶子/Akiko Sakurada

クリエイティブディレクター

入社以来、会社案内や学校案内、情報誌、オウンドメディアなどのエディトリアル制作に従事。企業や学校のブランディングや情報発信を支援するほか、社内報をはじめとするインナーコミュニケーション施策の企画・制作を数多く手掛ける。クライアントに寄り添った丁寧な対応を心がけ、本質的な課題を見極めながら、紙媒体からWeb、動画、eラーニング、ワークショップまで幅広い手段を活用し、課題解決に貢献している。

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