
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
CBデザイン本部 大貫 雅彦/Masahiko Oonuki(写真右)
第3CXデザイン本部 山本 奏/Kana Yamamoto(写真左)
3Dデジタルアーカイブの技術が、いま急速に進化しています。コストや工数の壁から「導入のハードルが高い」と考えられてきた3D空間の記録・活用が、新しいデバイスや軽量化技術の登場によってより身近なものに変わりつつあります。本記事では、3Dガウシアンスプラッティングの活用をリードするDNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)の大貫雅彦が、最新の技術トレンドと具体的な活用事例、そして「撮る」その先にある可能性について語ります。
また、本記事ではDNPが運営するオープンイノベーション拠点・DNPプラザ(東京・市谷)で開催した企画展「見かたをひろげる、ふしぎな恐竜展」(※現在は終了)にて、DCDの山本奏が会場を3Dガウシアンスプラッティングで撮影して3Dデータ化していく様子を動画化しました。ぜひ、合わせてご覧ください。
1. リアルな空間を、まるごとデジタルに変換する「3Dガウシアンスプラッティング」の力
昨今、デジタルアーカイブの手法として活用されはじめている「3Dガウシアンスプラッティング」とは、どのような技術なのでしょうか?
3Dガウシアンスプラッティングとは、現実の空間を撮影した画像・映像データをもとにして3Dデータを生成する技術です。2023年8月に開催されたCGの国際学会で発表されて以降、その精度の高さから一躍注目を集めています。
従来の3Dデジタル化技術(フォトグラメトリ※1)と比べて、なめらかで高精細な仕上がりが特徴です。人が実際にその場に立っているような没入感のある空間体験を、比較的低コストで手軽に実現できる点が評価されています。

今まではデジタルカメラで数日かけて何千枚もの撮影が必要だったところ、最新型の機器と3Dガウシアンスプラッティングを組み合わせれば、空間を歩きながら撮影するだけで空間の3Dデータが作成できるようになりました。DCDの山本奏が、DNPプラザ(東京・市谷)で開催された企画展「見かたをひろげる、ふしぎな恐竜展」を実際に撮影した体験レポートを、以下の動画からご覧いただけます。
- 注釈1フォトグラメトリ:複数の写真から対象物の形状・色・質感を解析し、3Dモデルを生成する技術のこと。多角度から撮影した大量の静止画をもとにデータを構築するため、撮影に多くの時間と枚数を要する。
動画:若手社員が体験/3Dガウシアンスプラッティングで企画展を3Dデジタル空間に!(0:60)

2. 最新の技術進化 ─ 新機材と軽量化で何が変わったか
最近の3Dガウシアンスプラッティングをめぐる技術的なアップデートについて教えてください。
大きな変化が2つあります。
1つ目は、歩きながら撮影するだけで3Dデジタル化できる専用機材の登場です。従来の3Dデジタル化技術では通常のデジタルカメラで大量の写真を撮る手法が主流でしたが、レーザーとカメラ、データの自動処理が一体化した専用機材が市場に出てきたことで、状況が一変しました。この機材を用いれば、複雑な構造や屋外などの広大な空間でも高精度に3Dデジタル化でき、計測時間の大幅な短縮が実現します。ケース・バイ・ケースではありますが、これまで数時間から場合によっては1日以上かかっていた空間計測が、おおよそ10〜30分程度で完了できるようになりました。
2つ目は、データの軽量化技術の実用化です。3Dガウシアンスプラッティングで生成される3Dデータはもともと容量が大きく、高性能なPCや専用アプリが必要なため、Webサイトのコンテンツとして活用することは難しい状況でした。ところが2025年あたりから、画像圧縮技術の応用や革新的な技術により1/10~1/20以下にデータ圧縮できる技術が実用レベルで登場してきました。
これにより、現在はWebサイトでの公開をはじめ、さまざまなデジタル媒体での活用を視野に入れるケースが増えています。
こうした最新の技術を活用して、DCDはどのようなことができそうか教えてください。
DNPは2025年9月に福井県立大学恐竜学部と「恐竜・古生物学分野における連携・協力の推進に関する協定」を締結しました(※2)。今後、共同で恐竜関連の新しいコンテンツやシステムの開発を行い、国内外のより多くの方々に恐竜の魅力を伝え、恐竜や古生物学分野への興味喚起につなげていきます。
こうした取組みは、DCDとして「空間を残し、活かす」デジタルアーカイブの可能性をさらに広げるものになると期待しています。
- 注釈2 「大日本印刷と福井県立大学恐竜学部 恐竜・古生物学分野の新事業創出と地域振興について連携協定を締結」をご覧ください。
3. 質の高いデータを生む、事前設計のノウハウ
3Dガウシアンスプラッティングを活用したコンテンツ制作において、気をつけるべきことは何でしょうか?
3Dガウシアンスプラッティングは、後から修正や補完を加えることが現状では難しい技術です。従来のフォトグラメトリであれば撮り漏れた部分を後から補うことも可能でしたが、3Dガウシアンスプラッティングは部分的な撮影ではなく全体を撮影し直すことになります。だからこそ、抜け漏れなく撮り切る設計が大前提となります。
完成したデジタルコンテンツでは、ユーザーが自由な視点で空間や物を探索します。そのため、どの高さや角度から見られても自然に表示できるよう、事前に撮影計画を立てておく必要があります。
撮影範囲が不足すると、ユーザーが未撮影の方向から見た際にデータが欠損し、画像が崩れる原因となります。一方で、同じ場所を撮影しすぎると、データ容量の増加やノイズの発生によって画質が低下することがあります。
このため、重複を最小限に抑えながら、多様な視点を効率よくカバーできる撮影ルートを事前に設計することが重要です。
こうした観点をふまえて高品質な3Dデータを生み出すためには、扱う機材への深い理解と、フォトグラメトリを含め多くの空間データの生成に携わってきた経験が不可欠だと感じています。

4. 「撮る」から「使う」まで一気通貫で、データの価値を活かし切る
3Dガウシアンスプラッティングの活用におけるDCDの強みはどのあたりにありますか。
まず前提として、私たちには高精度な撮影技術と、それを3Dデータ化する技術の豊富な実績とノウハウがあります。
しかし、私たちは3D化そのものを目的とは考えていません。3Dデータはあくまで手段であり、本当に重要なのは、そのデータをどのように活用するかです。
実際には、「撮影して終わり」「データを納品して終わり」となり、せっかく費用や時間をかけて作成したデータが活用されないまま眠ってしまうケースも少なくありません。私たちは、それが最ももったいないことだと考えています。
だからこそDCDでは、「何を残したいのか」「どのように活用したいのか」をお客様と丁寧にすり合わせ、その目的に合わせた活用方法を一緒に考えることを大切にしています。コンテンツの企画立案やアイデア創出から、制作・運用までを一気通貫で内製対応できることが、DCDの大きな強みです。
また、DCDがハブとなってDNPグループの関連部門と連携できる点も、さらなる価値創造に寄与しています。DCDだけでは対応しきれない領域も、グループ全体のネットワークを活用しながら、最も価値が高く、将来的な発展性も見据えた形をともに考えて提案できます。伴走しながら課題を解決していくスタンスが、DCDの姿勢です。
5. 空間記録が変えるビジネスの可能性
今後、3Dガウシアンスプラッティングの技術はどのような用途、シーンで広がっていくと思われますか?
技術の進化スピードは非常に速く、今できないことも半年もたたないうちに可能になっているというケースが続いています。まず確実に広がっていくのは、これまでコストや制作負担の面から導入が難しかった企業や自治体での活用です。大手企業の周年事業など「特別なタイミング」でしか実施できなかった3Dアーカイブが、技術の進化によってコストや制作負担が下がり、今では幅広い企業や自治体でも導入を検討しやすくなっています。
調整負荷の低減も大きなポイントです。以前は撮影のために対象施設を数日間封鎖し、多くの関係者に負荷をかける必要がありましたが、「昼休みの短い時間に工場の一角を記録する」「開店前の店舗に1〜2時間入って撮影する」といった手軽さで実施できるようになりつつあります。こうした変化によって社内調整の負担も軽減され、これまで実施を断念していた取組みも進めやすくなるはずです。
活用シーンとしては、バーチャルツアーや教育コンテンツへの展開はもちろん、インフラ設備の点検・記録への応用も期待されます。橋や建物の劣化状況など、専門家の目で確認すべき情報を現地にいるのと同じ感覚で多角的に観察できるのは大きな魅力です。写真や映像では難しかった「空間ごと保存して、後から自由に検証する」という使い方も広がっていくでしょう。

さらに、空間記録を蓄積・分析することで、イベントや店舗運営の改善にも活かせます。人気だった展示と不評だった展示のレイアウトを比較したり、配置や照明の違いを後から検証したりする際に、図面や写真では拾いきれなかった情報が3Dデータから読み取れるようになります。将来的には、蓄積した3Dガウシアンスプラッティングの3DデータをAIが分析することで、これまで経験則で語られていた「良い空間」の特徴を定量的に把握できるようになり、店舗運営の評価を可視化・言語化できる可能性があります。
「空間を残す」ことが単なる記録ではなく、未来への投資につながる時代がますます近づいています。何を残したいか、残したデータをどう使いたいか ─ そこからともに考えられることが、私たちDCDの強みです。漠然とした課題感や希望でも構いませんので、空間のアーカイブに興味があれば、ぜひ気兼ねなくご相談ください。
なお、3Dガウシアンスプラッティングについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

デジタルアーカイブを加速させる新技術 ― 「3Dガウシアンスプラッティング」とは?
3Dガウシアンスプラッティングとは?3Dデジタルアーカイブの新手法について、従来技術との違いや特徴、具体的な活用シーンを解説します。
- 注釈2026年10月時点の情報です。